1.あらすじ
悪の吹きだまりを生きてきた男。理知的な顔だちの裏に、もう一つの顔を持つ女。偽りの昼を生きた二人の人生を、“質屋殺し”を追う老刑事の執念に絡めて描く。ミステリーの枠を広げた一大
叙事詩。(
amazon.co.jpより)
2.感想
先日の記事で
「幻夜」について取り上げたが、その姉妹的作品と評されている本書をつい先日読み終えることができた。数多くの犯罪に手を染める男と女。描写より二人の共謀は間違いない。しかし、当人たちが会話をかわすシーンが一度もなく、どのような共謀がなされたかについては読者の想像にゆだねられている。また、当人達の思考や内面世界が一切描写されず、その行動や発言によって真意を推し量るしかない。このような特徴を有する珍しいタイプの小説であるが、それでも読み手をグイグイと最後まで引っ張っていくのは、やはり筆者のすばらしいストーリー構成力・表現力なのだろう。もっとも、ハッピーエンドではないため、読後感は後味が極めて悪いのだが、その一方で強烈な“悪”の魅力にも引き付けられる不思議な一作だ。この感じは
桐野夏生の「OUT」に近いかもしれない。
また、筆者本人はあえて明確に肯定はしていないらしいのだが、先にあげた「
幻夜」に本書の主要人物がやはり強烈な“悪”として再登場しているのだ。このあたりは、明確な記述はないのだが、所々に散りばめられた記述を読むと明らかにそう解釈できるようになっている。このあたりのテクニックもうまいなあ、と思わされる。そのようなわけで、「
幻夜」も再読しようかと思っている。
↓検証サイト(ただし、ネタバレ注意)
http://from1985.pekori.to/keigotaku/byaku_gen/byaku_gen.html
本書は過去にドラマ化されているのだが、つい先日に映画化のニュースが発表された。監督・キャストは未発表だが、どのようになるのか楽しみだ。
http://www.movienet.co.jp/news/2010/03/byakuyako100305.html
いずれにせよ、本書は日本ミステリーの大傑作だと思う。一度は読んでおいて損はないだろう。
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