企業法務担当者のビジネスキャリア術

東証一部上場企業に勤務する企業法務担当者がライフログの一環として日々の出来事を記録しています。

【資格】司法書士業界の今後の展望/若きビジネスパーソンより人生相談を受ける

1.人生相談

先日、知人のAさん(20代後半の営業マン 既婚者)から「現在勤務している会社におけるキャリアパスや職場の人間関係に限界を感じている。そこで、心機一転、司法書士試験のチャレンジを考えている。率直な意見を聞かせてほしい」という相談を受けた。

私は、現在、企業法務系ビジネスパーソンとして日々仕事をしているが、20代の頃に大阪市内の司法書士事務所に何年か勤務していたことがある(資格を持たないスタッフ職として)。なので、この業界のことは結構詳しいので、Aさんに次のようなアドバイスをした。

 

  • 司法書士は、売上の大半を不動産登記に依存するビジネスモデルとなっている。1980年代のバブル好景気の頃は、不動産がよく動いたため、司法書士は稼げる商売だった。しかし、これからは人口減少に伴って登記案件も減少していく。その結果、安値受注やバックリベートなどによる仕事の奪い合いが起きており、業界はレッドオーシャンとなりつつある。
  • 登記業務は、定型的かつ反復的なケースが大半を占めており、決して個人の固有スキルに依存するわけではない。例えば、インターネットで検索すれば、申請方法や書式の雛形などが公開されている。また、かつては法務局の人間は無愛想だったが、現在はサービス精神が豊富で(?)、素人に対して親切にアドバイスしてくれる。このように、その気になれば、本人申請のハードルは決して高くなく、実は無理して司法書士に依頼する必要はない。
  • 現在、Google翻訳やYahoo乗り換え案内など優れたサービスがあるように、かつて人間が行っていた業務をコンピュータ(AI)が代替する動きが急速に進みつつある。定型業務が大部分を占める登記業務がAIの影響を受ける可能性は否定できない。
  • 現在、大半の司法書士事務所は「守りの経営」でなんとか業容維持しているが、このような「逆風」の中、新人司法書士がこの業界に新規参入するのは相当の覚悟が必要となる。 

Aさんには「自分でメリットとデメリットを検証した上、納得できるならばトライしても構わないと思う。ただし、『試験に合格すれば人生安泰』という時代は終わったと思うよ」とアドバイスした。また、以下のエピソードも合わせて紹介。

 

Aさんは、「う~ん、もう少し考えてみます」ということで、その話は終わったが、20代のキャリアチェンジは、今後の人生を左右しかねないので、後悔することのないよう慎重に決断して欲しいと思う。

2.おまけ

冒頭に述べたかつて私が勤務していた司法書士事務所の現況だが、だいぶ前に経営者の方はお亡くなりになり、番頭格だった人が後を継いで事務所を経営している。ただし、当人は司法書士資格を有していないので、外部から有資格者をヘッドハンティングして、なんとか事務所を維持している。しかし、当時勤務していた有資格者が相次いでクライアントを奪って独立するなど、一時期すったもんだの内紛状態があったらしい。

 「企業法務の仕事こそが今の自分にとって天職」と考えている私は、司法書士の業界には特に未練もないし、接点を持つこともほとんどない。たまに、インターネットで不動産登記事項証明書や商業登記事項証明書を入手することがあるくらい。そういえば、先日社内クライアントから「取引先の社長にお中元を贈りたいのだけれど、社長の住所がわからない。何か良い方法はないか」という相談を受けたことがあった。商業登記法にもなじみがあった私は、「こちらでその会社の商業登記事項証明書を取得しますよ。商業登記事項証明書には代表取締役の住所が記載事項とされていますので、それで当人の住所はすぐにわかります」とアドバイスしたことがあった。

相手には「助かります!」と感謝されたが、こういった形で事務所の勤務経験が生かせるとはなんとも複雑な心境だ。

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