私は、現在に至るまで企業法務担当者として、和文や英文を問わず、これまで多くの契約書を読んできた。そうして、長年にわたって様々な契約書を読み込んでいるうちに、その完成度に応じて以下の3つに分類できると気づくようになった。
①レベルA(内容が非常に充実しており、文句のつけようがないもの)
②レベルB(内容的には一般的で、よく見かけるレベル)
③レベルC(内容的に明らかに不十分または取引内容と全く合致しておらず、とても同意できないもの)
①については、「なるほど、そこまで考えているのか!」と感心させられることも多く、今後の有益な資料とするべく条項をストックさせてもらうことがある。このレベルAは大手の上場企業クラスによく見かける。おそらく、このテの会社は、大人数で構成されている法務部門を擁しており、あらゆる観点からリスクチェックを行って、自社の契約書のレベルを極限まで高めているのだろうと推測できる。
次に②だが、どこかの参考書式を丸写しにしたのかと思われるほど、無難な内容だが、決して間違っていないので、これはこれで許容できることも比較的多い。
困るのが③のケース。条項の数が大幅に不足、場合によっては法令に抵触しているため、とても同意できないことが多い。その場合、こちらで大幅に内容を変更した対案を提示するか、いっそ自社の定型契約書を逆提案することになる。この③のケースを提示してくる会社は、小規模クラスの会社が多く、自社の法務部門にマンパワーを注ぐことができない社内事情が垣間見える・・・。
このように、定型契約書は自社の法務部門のレベルをあらわす「顔」と言い換えてもよいだろう。従って、その内容次第で、その会社の法務レベルもおおよそ推察できるもの。逆に考えると、自社の定型契約書にも同じことがあてはまるわけで、他社にどのような印象を持たれるか気になるところだ。