企業法務担当者のビジネスキャリア術

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【契約書】吉本興業の闇営業問題がいつの間にか別の論点にすり替わる事態に/法務部は契約締結のため修羅場かと・・・

ここ連日、ニュース番組で吉本興業がクローズアップされている。当初は、某タレントによる闇営業問題をきっかけとして反社会的勢力との接点(報酬の授受)が論点となっていた。しかし、7月に当人が記者会見を開いたことから、社内の隠蔽体質や経営者のパワハラ的言動が注目を浴びることになり、ついに公正取引委員会の事務方トップがコメントを発表するまでに至る。その結果、吉本興業は世論にあらがうことができず、これまでの慣習を取り止めて所属タレントと正式に契約書を取り交わす方針を決定したという。 

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企業法務担当者におなじみの雑誌「Business Law Journal」の連載記事では、様々な会社の法務部が紹介されている。私が過去に読んだ号では、吉本興業の法務部も取り上げられていたと記憶している。うろおぼえだけど、法務部員は5~6人はいたような・・・。それが、いきなり6000人のタレントとの業務委託契約書を作成するハメになり、現在、法務部はてんてこ舞いの状態だろう(人員不足で、近いうちに転職サイトに企業法務担当者の求人が出されるかもしれない)。

タレントにとっても、どのような契約内容になるか関心があるだろうが、吉本興業サイドとしては、契約内容(特に報酬のあたり)までは明るみにしたくないので、ガチガチの秘密保持義務条項を盛り込んでくることは予測できる。いずれにせよ、法務部は、定型契約書の作成や締結準備に向けて、連日バタバタと残業続きではないだろうか。

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しかし、冷静に考えてみると、日本を代表するエンターテイメントビジネスを手掛ける吉本興業にとって芸人は「主力製品」であり、今のご時世で「民法上、口頭契約でも有効だから契約書は不要である」という考え方自体がかなり時代錯誤的だろう。それが今回の事件で公正取引委員会まで登場することになり、あらためて問題視されることになった。その結果、世論に抗しきれなくなり、書面契約に方針転換したというのが真相だろう。そして、その余波が巡り巡って法務部にも及んだということか。しかし、長い目で考えると、この結果は、所属するタレントにとってプラスになると思う。

今回の一連の騒動は、反社会的勢力との関与・経営者のパワハラ・公正取引委員会・口頭契約から書面契約など企業法務担当者にとっては、企業法務ネタのオンパレード。従って、個人的には今後の事態の推移について興味深々。ことの起こりは「タレントの闇営業」だったが、今回の問題をきっかけに、同社自身の自浄作用が少しでも進み、「会社の闇」が晴れることを同じ関西人として切に願うばかりだ。

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