企業法務担当者のビジネスキャリア術

東証一部上場企業に勤務する企業法務担当者がライフログの一環として日々の出来事を記録しています。

【契約書】取引基本契約書の品質保証責任条項に垣間見える会社のホンネ/不利な契約ならばあえて結ばない

コロナ禍の中、4月に施行された改正民法がまだ記憶に新しいところ。このような状況の中、販売先から取引基本契約書の改訂版の提示を受ける機会が多い。それらの改訂版に目を通すと、保証責任(契約不適合責任)条項において定められる保証期間について、以下の二通りに分類されることに気づく。 

<パターンA>目的物に不適合がある事実を知った日から1年間(起算日が主観的)
<パターンB>目的物の引渡日から1年間(起算日が客観的)

改正民法第566条では、売主が買主に対して契約不適合責任を負担する期間について、「買主が不適合を知ってから1年間」と定められている(パターンA)。一方、商法第526条では、「売主から買主への引渡日から6ケ月間」と定められている。企業間売買の場合、民法ではなく商法が適用されるが、このルールは任意規定であり、商慣習などを考慮して、契約書で「引渡日から1年間」に延長していることが多い(パターンB)。 

これまで、大多数の企業とは、パターンBで取り交わすことが多く、今回の改訂版でもそれを踏襲する企業が多い一方、これを機会にパターンAに切り替えてくる企業もちらほら見受けられて、「おや?」と驚かされることも。もちろん、商品を調達する買主の立場にたって考えると、売主が負担する保証期間は長いにこしたことはないのは理解できる。しかし、パターンAの場合、引渡日から3年、4年、5年が経過しても売主は保証責任を負担することになりかねない(理屈上は消滅時効が満了するまでの間)。 

これは明らかに商慣習を逸脱しており、売主サイドにとって過大な責任となるため、「前回締結した取引基本契約書の保証条項の水準(パターンB)に戻してください」という交渉を営業部門を経由して行うが、反応は様々だ。「わかりました」とあっさり引き下がる会社もあれば、「いやいや全てのサプライヤーとはこの条件で契約しています!従って、この内容で同意して下さい!」というように高圧的な会社もある。しかも、始末が悪いことに、そのような会社に限って、自社のHPで紹介されている調達方針や購買方針には「全てのサプライヤー様と公平かつ公正な取引条件で・・・」というお見事なタテマエが掲げられたりもする。(この場合、関西人ならば、「どこがやねん!」とツッコミたいところ)

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このように、いくらHPで綺麗事(タテマエ)を並べても、契約書(特に保証責任条項)にはその会社のホンネが隠されているのが現実。こういった企業の購買部門はそのあたりのギャップ(ホンネとタテマエの乖離)をきちんと認識してるのだろうか?それを認識した上で平然と行っているならば、その会社も「なかなかのワル」だろうし、もし気づいてすらいないならば、もはや喜劇じみていてその姿は滑稽ですらある・・・。

一度聞いてみたいものだ。