企業法務担当者のビジネスキャリア術

東証一部上場企業に勤務する企業法務担当者がライフログの一環として日々の出来事を記録しています。

【資格】いつの間にか司法書士試験の受験者が大幅減少/司法書士事務所で働く場合の気になる待遇とは

1.受験者数の大幅減少

頻度はそれほど多くないが、仕事でお付き合いのある司法書士(仮にAさんとしよう)に自社の根抵当権の設定や抹消の登記申請を依頼することがある。Aさんとはもう10年以上の付き合いになり、私が元業界経験者だけあって、話題の共通点も多い。 

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先日、Aさんとお会いした際に、いろいろ雑談をしていると、司法書士試験の受験が話題にのぼった。聞くところによると、 

  • 司法書士試験の受験者数はピーク時に30,000人を超えていたが、この10年間で15,000人を割り込んでいる状況。そのため、受験料も値上がりしている。
  • 受験会場はかつて全国都道府県50か所に設置されていたが、現在は主要都道府県内15か所に縮小されている。従って、遠方居住者は前泊での受験を強いられている。
という状況らしく、少し驚いた。
私が受験勉強をしていた頃は受験者は最盛期の30,000人近くで、当時の熱気を思い起こせば、信じられない話だ。Aさんが説明するには、その原因は少子高齢化やAI問題などに加えて、昨今の司法書士に対するネガティブ報道(週刊SPAの記事など)が受験生に影響を及ぼしているらしい。こうなると、悪影響を受けるのは、LECや伊藤塾などの資格試験受験予備校。以前にも記事にしたように、司法書士試験専門の受験予備校である日本司法学院もいつの間にか廃業しているし、遅かれ早かれ業界の規模縮小の動きは避けられそうにない。 

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2.司法書士事務所の待遇とは

私はかつて大学在学中に司法書士試験の受験勉強を開始して、そのまま司法書士事務所に就職し、働きながら受験勉強を行っていた。しかし、事務所で働くにつれて、やがて業界の裏側や現実の姿が垣間見えてくる。その結果、受験勉強に対するモチベーションが下がり、4年ほど働いてから別業界に転職した。それから回りまわって、企業法務の世界に身を置くようになり、司法書士に仕事を発注する立場になろうとは・・・。
 
なお、あまり知られていない事実だが、司法書士事務所といっても、一般企業に比べると待遇はお世辞にも良いとはいえない。勤務当時は20代だった私の年収は300万ほどで、有資格者の同僚といえども400~500万ぐらいだったと思う。あと、思わぬ盲点なのが、法律上従業員5人未満の個人事務所は社会保険の加入は任意とされているため、社会保険(厚生年金と健康保険)には未加入の事務所がかなり多い点。そのため、サラリーマンだが、形式上は自営業者扱いとなり、定年後の年金は国民年金の月6~7万ほどしかなく、それを見越した将来設計が必須となる。また、労働安全衛生法で定められている従業員に対する年1回の健康診断などもなかった。
 
このように、クライアントから「センセイ、センセイ」と呼ばれている立場でありながら、「実はセンセイの方がクライアントより待遇が極めて悪い」というまるでブラックジョークのような実態を知って、当時はおおいに絶望したもの。
 
学生の頃はそのような知識に疎かった私だが、働き続けているうちに、一般企業に就職している友人との待遇面の相違について、「これはどうもおかしくないか?」と疑問が膨らんでいった。この点については、当時の先輩たちが所長のいない時に不平不満をグチグチと漏らしていた光景は今となっては懐かしい思い出(笑)。

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また、私が事務所に勤務している頃に司法書士試験の合格者(30歳男性・既婚で妻が妊娠中)が入所したことがあったが、「社会保険が未加入では将来が不安。これでは妻子を養えない」と半年もたたず退職したという出来事があった。結局、この出来事をきっかけに司法書士業界に見切りをつけて別業界に転職する。
 
私が学生の頃は、インターネットの黎明期で、司法書士業界の内情や待遇(社会保険の未加入)などを記した情報はなく、外部から把握することは難しいという事情があった。当時の受験予備校は「合格すれば年収1000万は確実!」など無責任な誇大広告を行っており(=法律受験予備校が景品表示法に違反するというブラックジョーク)、当時はそれに引っかかって受験勉強を始めた人も多かったはず。一方で、以下のような業界の実情を暴露した書籍などは皆無だった。 

冒頭で紹介した司法書士試験の受験者数が引き続きこのペースで減少し続けるならば、受験者数が10,000人を下回る事態が発生するかもしれない。Aさんによると日本司法書士連合会もこの問題には頭を痛めているらしい。

私が大学を卒業して最初に勤務した職場は、確かにこのように「プチブラック」な環境ではあったが、今振り返って考えてみると、ある意味、強靭なハングリー精神を養ったというか、自分のメンタル力(GRIT)を鍛える良い人生修行の場になったのも確か。それが回り回って現在の仕事にも役立っているし、あの当時と比べると現状が比較的恵まれていることを日々実感しながら生活を送っている。人生とは本当に不思議なものだ。

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