企業法務担当者のビジネスキャリア術

東証一部上場企業に勤務する企業法務担当者がライフログの一環として日々の出来事を記録しています。

【資格】オンライン登記申請書作成サービス「AI-CON登記」/司法書士業界に風穴を開けるビジネスモデルの登場か!?

1.商業登記に特化したリーガルテック

先日ネットで興味深いリーガルテックサービスを発見。それは、商業登記の登記申請書類の作成代行オンラインサービス「AI-CON登記」。 本人申請に基づく商業登記申請を格安料金でサポートするというもの。
 
<特徴>
  • 役員変更・商号変更・本店移転・新株発行などが対応可能で、1件あたり1万円と安い。(さすがに会社設立登記は複雑で未対応の様子)
  • 利用者がフォーム画面に情報を入力すると申請書などのデータが生成されるので、それをダウンロードして印刷する。
  • 利用者は、書類に押印して法務局に郵送または直接申請する。
  • 特許庁のデータベースによると、運営事業者は、2019年初めにこのシステムについて特許権を申請し、権利化済み。

2.司法書士事務所勤務者としての感想

本ブログで触れているように、私は過去に大阪市内の零細司法書士事務所に勤務していた経験がある。そこでは、非上場企業の役員変更などの商業登記申請を税理士事務所や会計事務所から受任していた(当時はまだ会社法は施行されておらず、商法に基づく役員任期は2~3年で、重任を繰り返すのが通例)。その場合、ワープロソフトで商業登記申請書を作成・印刷し、添付書類(株主総会議事録、取締役会議事録)と一緒に法務局に申請する。その場合の手数料は4~5万円ぐらいだったろうか。 

kigyouhoumu.hatenadiary.com

「AI-CON登記」は、最終的には法務局への登記申請を本人申請で行うという点がポイントだが、登記申請は必ずしも司法書士に委任する必要はなく、本人が申請しても構わない。実際のところ、私自身も過去に実家の住宅ローンの完済に伴う抵当権抹消登記(不動産登記)を法務局に申請したことがある。しかも、現在はインターネットで簡単に申請方法を調べることができるし(加えて、近年の法務局のサービスレベルもかなり向上している)、種類によって多少難易度が変わるが、本人登記申請のハードルは決して高くはない。

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数年前から業界では「AIが司法書士や行政書士の仕事を奪う」と言われており、IT化やマイナンバーカードがそれを促進するとされていた。しかし、ハンコ制度(本人確認方法)が障害となっており、現時点においては、それほど進んでいない。しかし、昨年にコロナ渦を受けて内閣府から契約書にハンコは必須ではないという見解が示されたように、先のことはわからないが・・・。 
この「AI-CON登記」は、スタートからゴールまで完全にデジタルで完結するのではなく、利用者は、最終工程において「法務局に登記申請書(紙)を提出する」というアナログ的作業が発生するのが若干の手間ともいえる。それでも、従来の司法書士委任型よりはスピードやコスト面で優れている。「簡単かつスピーディに、なおかつ安く商業登記を済ませたい」という会社経営者には受け入れられやすいサービスだろう。印紙税は別費用としても手数料1万円というのは司法書士に依頼するより安く済むからだ。 

3.知人司法書士の感想

一般的に登記業務は司法書士の独占業務とされているが、本サービスの運営会社は、事業開始前に、経済産業省に対して「本ビジネスモデルは、司法書士法などに抵触しないか?」という照会請求を行っており、「特に問題ない」という回答を得ているようだ。従って、司法書士連合会や司法書士会にしてみれば、本音はともかく、本サービスを黙認せざるを得ないというのが実状だろう。
 
ちなみに、個人的に仕事でお付き合いのある司法書士A氏にAI-CON登記について聞いてみたところ、一応その存在は知っていた。A氏が言うには、「司法書士の本音を言わせてもらうと、旧来のアナログ的なやり方がこれからも長く続く方がありがたい。このような便利で安いデジタル的なサービスが充実すると、今後の我々の飯のタネがなくなるので、業界的にはあまり歓迎していない」との事。なるほど、身もフタもないが、確かにそれはそうだろう(笑)。

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このように、知らぬ間に社会の片隅で起きているこの小さな変化は、デジタル化やテクノロジーの進化により今後の市場環境や労働環境が変化していく兆候なのかもしれない。