企業法務担当者のビジネスキャリア術

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【書評】「マルチの子」西尾潤(徳間書店)/マルチ商法を体験した著者の実体験に基づく自伝的小説!?

1.マルチ商法の実体験から

先日図書館で借りて読んだのがこちらの小説。
マルチの子

マルチの子

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マルチ商法いわゆるネットワークビジネスを題材にした小説で、著者の実体験に基づいているらしい。従って、こういう世界もあるのか、と興味深く読むことができた。

bunshun.jp

主人公は、高校卒業後に就職した勤務先を退職した後、ふとしたきっかけでマルチ商法の世界に飛び込んでいく。そして、一度は幹部クラスまで出世するが、そこには落とし穴があって・・・というストーリー。なお、本作は関西地方が舞台になっており、梅田・心斎橋・淀屋橋・明石・住道など知っている地名が登場するため親近感が感じられて面白い。

作中後半で会員の獲得に伸び悩んだ主人公は、マッチングアプリでネットワークを広げようとして知り合った男に以下のような説教を受けるが、これがマルチ商法の本質を言い当てている。

「マルチ商法で儲かるのはごく一部の上位者だけ。普通の会員はいっとき調子が良くても必ず破綻する。売上が足らなくなって自己資金を突っ込み、それでも足らなくなって借金が膨らんだ結果、最終的に破綻してしまう」

つまるところ、マルチ商法とは「上位者が下位者を食らう」という搾取型ビジネスモデルであり、ネットワークに所属する会員の大半は損をするようになっている。痛い目に合いたくないならば、手を出さない方が身のためだ。

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2.おまけ

ちなみに、私は20代の頃に大阪市内の司法書士事務所に勤務していたが、そこで知り合った二人(そのうち一人は幹部クラスで、かなり羽振りは良かった)から別々のタイミングで某有名マルチ商法の勧誘を受けたことがある。彼らはいずれも「一緒に成功しよう」という甘言で私を誘ってきたが・・・。
 
しかし、いたって現実的な私は「本当に儲かる話ならば、赤の他人にわざわざ紹介せずに自分でこっそりと独占するはず。世の中にそんなウマい話なんてあるわけない」と考えて、いずれも丁重にお断りした。もちろん、その二人とは完全に縁が切れており、こうしてブログのネタにしている。
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リーマンショックや新型コロナウイルスを経て貧富の差がますます広がり、格差社会に突入しつつある現代ニッポン。ある意味、「強者が弱者を食らう世界」となりつつあり、私や家族も様々な詐欺に遭いかけた経験がある。幸い大きな被害に遭うことなく、今のところ堅実な人生(?)を送っている私。
 
今のご時世では、少しでも油断すれば、自分が「搾取される側」になってしまう。そうならないためには、やはり知識や経験に基づく正しい判断で自分と家族を守らなければならない。マルチ商法の体験者である著者が書き下ろした本書はその一助になるかもしれない。