法務部門のマネジャーである立場上、会社の代表者印や会社印を押印する機会が多い私。一般的に、書類に自社印鑑を押印する作業は、法務部門や総務部門にとって重要な業務の一環であり、正確さと迅速さが求められる。しかし、近年の環境変化は古くからの印鑑文化に大きな影響を与えている。特に、2020年に始まったコロナ禍が大きな転機となり、政府から印鑑に関する新たな指針(=契約書に押印は必須ではない)が公表。これにより、特に行政向けの印鑑の使用頻度は大幅に低下し、印鑑の役割や意義が再考されたのは記憶に新しいところ。
その一方で、コロナ禍をきっかけに電子契約サービスが急速に拡大し、そのユーザーも増え続けている。契約相手から電子契約を提案されて、私が実際に契約作業(クリック)を行うことも多い。そういえば、複数の会社と取引しているフリーランス業の妻は以前に秘密保持契約と業務委託契約をクラウドサインやGMOサインで契約したと言っていた。
これらの電子契約は、①印紙税の対象とならず節税できる、②押印した書類の郵送のやりとりが不要となる、③リモートワークでも対応可能など多くのメリットがある。さすがに株主総会議事録や取締役会議事録は印鑑の押印が必要だろうと思っていたが、なんとこれらの電子化サービスがあると知って驚いた(利用するのは超大手企業だろうが)。確かに押印者から印鑑を集める作業はなかなか大変・・・。
このようにコロナ禍をきっかけに電子印鑑が急速に存在感を増しているが、世間ではまだまだ紙と朱肉を使ったアナログな押印は、依然として一部の書類で求められており、完全には廃れていない(特に保険会社や金融機関向けの書類など)。従って、しばらくの間は、契約書締結に際しては、アナログ(書類に朱肉で印鑑を押印する)とデジタル(ベンダーが提供するシステム上で電子契約を行う)の二つのスタイルが並行して混在していくだろう。例えるならば、経理担当者がソロバンと計算機の両方を使うようなものだが、こればかりは仕方ない。現段階では印鑑文化が完全に消滅することは全く想像もつかない。
いずれにせよ、タイピング音が大きくて、筆圧も強い私は(←妻によく言われる)、印鑑の押印時にもめちゃくちゃ力をこめるので、腱鞘炎にならないように注意しなくては・・・!