1.某芸能人の不祥事より
先日のニュースで某芸能人の不祥事が報道されていた。なんでも高速道路で車の追突事故を起こし、治療先の病院で看護師を暴行して逮捕されたとか。報道を見る限り、事故そのものよりも、その後の対応に問題があったようで、世間の批判は特に「人としてのあり方」に集中しているようだ。この某芸能人は、10代で華々しく芸能界にデビューし、瞬く間にスターダムを駆け上がった人物。かわいらしい顔立ちと演技力が人気を呼び、出演するドラマや映画はいずれも話題を呼んだ。しかし、ここ数年はプライベートのスキャンダルが続き、次第にその名は演技の評価よりもゴシップ欄で見かけることが多くなっていた。

私がこのニュースを目にして、ふと思い出したのが中国古典「貞観政要」に記されている有名なエピソード。かつて「名君」と称された唐の太宗・李世民は、建国後しばらくして重臣たちにこう問いかけたという。
「創業と守成、いずれが難きや?」
これは、「国家や組織を打ち立てること」と「それを維持し続けること」のどちらがより困難か、という問いだ。重臣の一人は「創業こそが難しい」と即答したが、別の臣下は「守成の方がむしろ難しい」と答えた。太宗は両方の意見に理解を示し、「創業はすでに果たした。これからは皆で力を合わせて、守成に努めようではないか」と語ったという。
2.ビジネスパーソンにとっての「創業と守成」
この話、国家や組織に限らず、個人の人生にも当てはまる部分があると思う。とりわけ芸能界のような、競争が激しく変化のスピードも早い世界では、成功するだけでも並大抵のことではないが、それを維持し続けることはさらに難しいだろう。若さや話題性、新鮮さ、勢いという「初期装備」だけで突き進める時期は限られている。
さらには、私たちビジネスパーソンにも同じことが言えるのではないだろうか。新しい事業を立ち上げたり、転職してキャリアのステージを上げたり、資格を取って専門性を磨いたりと、「創業」にあたるフェーズでは、努力や集中力が成果に直結しやすい。しかし、その後の「守成」フェーズでは、成果を持続させるための人間関係やチームワーク、継続的な成長意欲、さらには失敗や批判を受け止める人間的器量や克己心が求められる。これは目に見えにくいが、間違いなく重要なスキルだし、私はこのブログでも何度か言及している。最後の最後で決め手になるのは、当人の「人間力」だということに。
今回のニュースは、某芸能人にとって「守成」がうまくいかなかった例とも言えるかもしれない。過去の成功体験や称賛に囚われて、自分を見つめ直す機会を失ってしまった結果が現在の状況につながったのではないかと想像してしまう。私が思うに、(特に後半以降の)人生において本当に試されるのは「自己更新力」ではないかと思う。時代や環境が変わる中で、自分自身をアップデートし続け、周囲との関係性を大切にし、感謝の気持ちを忘れずにいられるか。それができる人こそが、どの世界でも「真のプロフェッショナル」として評価されるのではないだろうか。スマホのアプリでも継続的にアップデートされるアプリは評価されるが、更新がストップしてしまえば、「クソアプリ」と揶揄される。果たして人間も同じではないだろうか・・・?
かつて20代から30代にかけて、キャリアで迷走していた時期があった私は、「企業法務」という天職にようやく出会って、その能力開発に全力を注いできた。その結果、「我こそはその道のプロフェッショナル」と一応胸を張って言える程度のレベルに到達することができた。となると、創業に一区切りつけて、そろそろ守成(守りつつ、しなやかに発展させる)に切り替える時期なのかもしれない・・・。
「創業は一時の勢い、守成は日々の修練」
ふとそんな言葉が頭をよぎるが、今回のニュースは、私たち一人ひとりの人生においても、「創業」の先に待ち受ける「守成」の難しさと、そのために磨くべき内面の重要性を改めて考えさせられたような気がする。

