企業法務担当者のビジネスキャリア術

氷河期世代の企業法務担当者がライフログとして日々の出来事を記録しています。2009年に開始したブログは17年目を迎えました。

【ザ・JTC】仕事は「深掘り」か「広がり」か?/ JTCの“歯車”を辞めた元同僚が教えてくれたこと。

1.大企業と中小企業の違い

はてなブックマークを眺めていたら、ふと気になる記事が。読んでみたら案の定、「あー、そうそう!」と共感の嵐。
 

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いわゆる伝統的な大手日本企業(Japanese Traditional Company)では、仕事は見事に細分化されている。従って、こちらの記事のように人事や総務の仕事でも、「社員寮を管理する人」「旅費精算をする人」「社員の慶弔対応をする人」のように完全分業化されているケースが多い。この記事を読んで思い出したのが、前職で同じ事業所で勤務していたTさん。Tさんは、関西に本社を構える超大手電機メーカー(東証プライム)の出身。私と同じく転職組で、ある日の雑談で前職時代のことを語ってくれた。
 
 
「僕の仕事は、巨大なベルトコンベアの上を流れる部品の一つを、ただはめ込むだけのようなものだったんです。工程が1から10まであるとしたら、僕が触れるのは2から3まで。全体像なんて全く見えなくて。しかも、他部門との面倒な調整でしょっちゅう手戻りがあって、一体何のためにやっているのか…って、いつもモヤモヤしていました」
「確かに、大手なので給料は悪くなかった。でも、心のどこかで『このままでいいのか?』って。仕事の面白さや手応えを、少しずつすり減らしていたのかもしれないですね」
「やっぱり、中堅くらいの会社で、全体を見渡しながら色々な仕事を回していく方が、ずっと楽しいですよ。そう考えたので、転職したのです」

 

 

・・・さすが超大手JTC出身者の語る言葉だけあって、説得力がある。その話を聞いたときのTさんの表情は、どこか吹っ切れたようで、不思議と今でも印象に残っている。
 

2.法務や知財の場合

これと似たようなエピソードで例えば、例えば、超大手企業の知財部は、知財訴訟を行う人、出願を行う人、中間処理をやる人、先行技術調査を行う人・・と完全な縦割りで分業化されているらしい。まあ、件数は膨大なのでそうなるのだろうけど。法務部門も同様で、秘密保持契約書をチェックする人、コンプライアンス業務を行う人…というように担当が分かれているとか。想像もつかないが、朝から晩まで「その仕事だけ」をこなすのだろうか。
 
生産性の追求や効率化の観点では分業化はある意味正しいが、まるで流れ作業のように「自分の持ち場」しか見えなくなる。それはセクショナリズムの温床にもつながる。もちろん、一定期間ごとに自分が担当する業務は交代するのだろうが、全体を俯瞰する立場に出世するまで時間を要する。一方で、Aさんが言っていたように、いろんな仕事をつまみ食いしながら経験を重ねる方が、何より飽きないし、成長実感もある。冒頭のTさんの言葉には、実務を超えた“働くことの本質”が滲んでいる気がする。
 

3.そして、私の場合

私自身がまさにTさんの言葉を実感する毎日を送っている。様々なジャンルの仕事をマルチにこなし、日々新しい発見と学びがある。あまり詳しく書けないが、一人四役~五役をこなしているような感じ。他部門との調整や協業もしょっちゅうで、社内課題を発見した場合、私が「仕掛ける側」に回ってルールメーカーとしての役割を果たすことも多い。しかし、この働き方は自分の性には合っていると感じている。
 
あと、扱うテリトリーも広いためか、時には未知の仕事に遭遇することもある。そのときは、企業法務系ビジネスパーソンとしてこれまで培ってきた経験則や論理的思考を横展開して、新しい仕事に対処するしかない。それが通用しない場合は、ゼロベースで複数のオプションを検討し、順番に実行する。それがドンピシャでうまくいったときは、やはり楽しいし、達成感を感じる。このような「予測困難性」や「突発的なイレギュラー」は、ある意味自分の実力を試されているようで、それはそれで面白いものだ。
 

 
もっとも、これは人によって向き不向きがあるのだろうし、私もどちらが正しいとはこの場で言うつもりはない。だが、これまで氷河期世代として、<好奇心と反骨心>を糧に地道にキャリアを形成してきた私としては、やはりJTCの分業体制は肌に合わない。過去の転職活動時において、JTCに落とされたこともあるが、逆にそれで良かったと思う(もしかしたら、向こうも面接で私の本質を直感したのかもしれないが)。

 

kigyouhoumu.hatenadiary.com

 

 
やはり、ある程度の広い裁量で、幅広いジャンルを股にかけて走り回る方が、自分の性に合っているようだ。仕事は「深掘り」か「広がり」か。どちらを選ぶかでキャリアの風景もガラッと変わるもの。あなたならどちらを選ぶだろうか。