1.夏草や、兵どもが夢のあと
昨年11月の福岡家族旅行については以前触れたかと思うが、初日の福岡空港到着後、私は家族と別れ、ある場所へと向かった。それは、箱崎公園内にある「元寇史料館」。ここは1274年と1281年、二度にわたるモンゴル軍の侵攻。その激闘の歴史を伝える当時の武具や史料が展示されている歴史好きにはたまらないスポット。
※JR博多駅から一つ目の吉塚駅から徒歩10分ほどの場所。

展示は決して華美ではない。むしろ簡素で、現代的な演出とは無縁だ。しかしそれがかえって、余計な脚色を排し、当時の空気感を静かに、そして確かに伝えてくる。歴史好きにとっては、たまらない空間だった。

私自身は2020年に発売された元寇をテーマにしたアクションゲーム『Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)』をかなりやり込んだ人間。それだけに、今回の旅行で本物の史料に触れることを、ずっと心待ちにしていた。
2.6年ぶりの再プレイ:対馬の冥人が問いかけるもの
旅行から戻り、高まった熱量のままに『Ghost of Tsushima』を6年ぶりに再プレイ。約2ヶ月かけてじっくりとクリアしたので、その終盤の印象的な展開を振り返ってみたい。
物語終盤は、モンゴル軍による日本本土侵攻の兆しを察知した主人公・境井仁が、司令官コトゥン・ハーン討伐に向けて決起する場面へと進む。仲間とともに敵拠点へ攻め入る戦いは、まさに総力戦と呼ぶにふさわしい。
(以下の動画は私がプレイしたもの)
※仲間たちと敵の本拠地に殴り込みをかける。いよいよ最終決戦!
※相手方の総大将とは最初は一騎打ちだが、倒すと船に移動して団体戦となる。
そして、ハーンとの一騎打ち。
※1回目ではやられたのでコンティニューで再度チャレンジ。
※多勢に無勢なので、逃げ回りながら飛び道具で一人づつ倒していく。
※遂にコトゥン・ハーンを倒した仁。これでエンディングと思われたが・・・。
激闘の末、ハーンを討ち果たし、満身創痍で戦場を後にする仁と相棒のゆな。しかし、真のクライマックスはその先にあった。
最後に立ちはだかったのは、仁の育ての親であり、対馬の地頭でもある叔父・志村。 父を亡くした仁を引き取り、武士としての生き方を教え込んでくれた大恩人。仁も志村を実の父のように深く尊敬している。しかし、正攻法や名誉を重んじる志村に対し、仁は民を守るため、あえて「誉れ」を捨て、毒や暗殺を厭わない「冥人(Ghost)」へ変貌していく。ネットミームでも有名となった「誉れは浜で死にました」という仁の言葉通り、二人の道は決定的に分かたれ、ついには刃を交えることになる。
※紅葉が舞い落ちる場面で叔父との最終バトル。これは読めない展開。
この対立が、まさかのラスボス戦へと昇華される構成は見事というほかない。また、決戦直前に和歌を詠む演出など、海外の制作会社とは思えないほど日本文化への理解が深く、細やかなローカライズには改めて脱帽させられる。
※志村との対決からエンディングへの流れは秀逸。まるで映画のよう。
そして、志村を打倒したプレイヤーには、「志村を生かすか殺すか」の選択が迫られる。初回プレイでは生かす道を選んだ私だが、今回はあえてその逆を選択した。美しくも悲しいエンディングは、もはやゲームの枠を超え、一本の大作映画を観終えたような感動的な余韻を私に残してくれた。
※エンディング後もそのままプレイ可能。島に残るモンゴル軍を倒すことができるが、ここでプレイ終了。
故郷を守るために「誉れ」を捨てる――主人公の苦悩と覚悟の描写は実に見事としか言いようがない。同じ和風チャンバラアクションゲームでもアクション性を前面に押し出した「SEKIRO: Shadows Die Twice」(フロムソフトウェア)とは対照的に、本作は物語の力でプレイヤーを引き込むタイプの大傑作と言えるだろう。
3.プレイを終えて:歴史とエンタメの幸福な融合
6年ぶりの再プレイとなったが、細かなエピソードを忘れていた分、新鮮な気持ちで楽しめた。何より福岡旅行で「元寇史料館」の空気に触れた直後だったことが、没入感をさらに深めてくれたように思う。現実の歴史とフィクションが重なり合い、体験の密度を一段と高めてくれた。

※境井仁の声優は「ワンピース」のゾロ役の人で、名演技がさらに作品の質を高めている。
ちなみに、2025年には数百年後の北海道を舞台にした続編『Ghost of Yotei(ゴースト・オブ・ヨウテイ)』が発売。残念ながら私はPS5を持っていないので、YouTubeの攻略動画でその世界観を味わおうと思っている。どうやら「Ghost of Tsushima」のエンディング後に北海道に渡った境井仁のその後に関する描写があるらしい。

今回の再プレイは、単なる「懐かしさ」にとどまらない体験であった。史実(リアル)に触れたあとで物語(ゲーム)を追体験する――その相乗効果によって、作品の奥行きがより深く感じられた。この作品はしばらく手元に置いておこうと思う。
またいつか、対馬の風に吹かれたくなった時に、3回目の旅に出ることになるだろうから。

