企業法務担当者のビジネスキャリア術

東証一部上場企業に勤務する企業法務担当者がライフログの一環として日々の出来事を記録しています。

【企業法務】司法書士と企業法務の関係性/両方の仕事を経験した私より一言

1.とある報告書を参照して 先日、インターネットでたまたま「司法書士による企業法務に関する実態調査の分析報告」という資料を発見した。これは、2003年頃に日本司法書士連合会より公表された出版物の一部のようである THINK 司法書士論叢 会報第101号|日本司法書士会連合会 その内容を抜粋すると以下のとおりだ。
・元来商業登記に携わっている司法書士は、改正商法を機会に企業法務サービスを積極的に提供することによって、司法書士の業務範囲を拡大していくことができるのではないか。 ・そのため、司法書士による企業法務への関与の実態を調査し、司法書士の企業法務への関与の課題及び今後の実践方策や業務拡大の方法を探っていきたい。 ・紛争の法的処理を中心とする自己責任社会に移行しつつあるので、企業法務の需要が高まることは間違いないが、司法書士に企業法務に取り組む主観的・客観的条件が整っているのかが問題となる。 ・企業法務の一職域である債権回収に従事する司法書士はまだまだ少ないのが現状。やはり司法書士は登記業務の専門家と認識されている証でもある。 ・司法書士が企業法務に取り組む際の障害として、「司法書士自体に企業法務意識が不足している」「弁護士・税理士等による企業法務の関与が大きい」「司法書士自体の質的レベルが不足している」などがあげられる。 ・司法制度改革に伴う弁護士の増加や電子化による申請の簡易化などに伴い、他士業同様司法書士も現在その業務体系について見直しが迫られている。将来に向けて司法書士が登記の専門家から企業法務全般の専門家へとその専門領域を広げていくことが必要ではないだろうか。
これを読んだ限りでは、日本司法書士連合会は、司法書士はもはや登記サービスのみを提供だけでは、尻すぼみとなるため、業界として職域を拡大することを問題提起しているようである。10年前にこのような意見が出されていたとは、なかなか先見の明があると思う。 2.過去の経験より そういえば、私が勤務していた司法書士事務所は、登記サービスの提供をビジネスモデルとする典型的な事務所であり、不動産会社や金融機関より不動産登記(所有権保存や抵当権設定など)を、提携する公認会計士事務所や税理士事務所より商業登記(役員変更や資本金変更など)を受任していた。従って、いわゆる企業法務サービスというものは全く提供していなかった。所有権移転登記の一環で不動産の売買契約書の作成などは行っていたが、雛形を使いまわすといった単純な業務であり、リスクを特定・評価した上、法令や判例を考慮した複雑な契約書を作成するというケースはもちろんない。 上記報告書のように、このような事務所が大多数と占めているのが司法書士業界の現状ではないだろうか。従って、司法書士事務所が企業法務サービスを提供するというのも無理がある話ではあるが(弁護士法違反というハードルもある)、個人的には、中小企業に対して企業法務サービスを提供するという着眼点は非常に面白いと思う。もちろん、そのためには、司法書士業界やユーザにおいて「司法書士は登記サービスさえ行えば良い」という固定観念を少しずつ変化させた上、司法書士自体の質的レベルを向上させる必要がある。 ただ、10年前はともかく、現在はロースクール制度の運用開始による弁護士が増員された結果、ライバルが巷にあふれているのも事実。むしろ食い詰めた弁護士が司法書士のメイン業務である登記業務にまで逆参入しているという話もちらほらと聞く。また、過去の記事において、行政書士司法書士の商業登記業務にも参入しようとして断念したという話は触れたかと思う。 【資格】司法書士業界への規制強化/これも法令遵守重視という世の流れか?: 企業法務担当者のビジネスキャリア術 このような話を聞くと、各士業が過去に住み分けがキチンとなされていた職域をめぐって、なりふりかまわず縄張りをしているという印象を受ける。各業界もこの長期不景気を乗り越えるため、自らのメシの種を増やそうと必死なのだろう。そもそも、弁護士業界ですら今後どうなるか予測がつかないと称されている始末である。 弁護士業界の将来 - NagoyaSogoLaw2011 弁護士業界の課題と展望 - 黒猫のつぶやき 3.企業法務と司法書士の違い 私は司法書士事務所で勤務していた経験があるため、たまに「司法書士と企業法務の仕事の違いは何ですか?」と聞かれることがある。そのときは、私は、「司法書士は定型的・手続的な業務がメインであり、依頼を受けた時点で仕事のゴールはほぼ確定しており、誰が受任者であってもそれが変更されることはない(変更を加える余地そのものがない)。一方、企業法務は、個人のスキル・創造性が仕事の成果にダイレクトに反映されやすい側面があり、受任者によっては仕事の進め方やゴールを大きく変更させる可能性がある」と答えている。 もちろん、私としては、企業法務の仕事の方が自分に合っていると感じているのは言うまでもない。
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