企業法務担当者のビジネスキャリア術

転職経験が豊富な企業法務担当者がライフログの一環として日々の出来事を記録しています。

【契約書】自社の定型契約書を作成する際の5つのポイント/あくまで個人的な見解ですが・・・

今回は、久しぶりに法務がらみの話題を。

企業法務担当者は、社内クライアントから「今度、このような取引を継続的に行いたいのだけれど、定型契約書を作成して頂けませんか?」という依頼を受けることがある。逆に法務サイドから反復的な取引が多い場合、所管部門に対して定型契約書の作成を提案するケースも少なくない。 今回は、自社の定型契約書を作成する際に企業法務担当者が注意するべき留意点について簡単に触れてみたい。

1.取引の実体内容を正確に把握する
これはなにも定型契約書の作成だけに限らないが、契約書作成前にきちんと把握しなければならないのが、「自社と相手方がどのような商取引を行うのか」「その取引にどのようなリスクが潜んでいるか」という点。すなわち、その取引を行った場合、当事者間において、お金、情報、商品、サービス等がどのように行き交うのかを正確に把握した上で、当該取引に関するリスクを予測・評価してみる。その上で、リスクに備えた契約書を作りこんでいきたい。

2.納得のいくまで所管部門の担当者と打ち合わせを行う
法務部門が作成した契約書案をそのまま確定とするのではなく、まず関係所管部門に提示した上、修正の要否等について意見交換を行うことも大事。やはりその契約書を使用するのは、現場担当者であるため、ユーザ目線の立場から細かくチェックしてもらった方が望ましいからだ。企業法務担当者の上から目線による独りよがりな契約書は論外であり、あくまでユーザの意見を余さず取り入れた「使い勝手の良い」契約書を目指すべき。

3.他社の契約書を参考にする
これは何も定型契約書に限らない話だが、大手企業が作成する契約書は非常に良質なものが多く、読んでいて、なかなか勉強になることも多い。なぜならば、大手企業の定型契約書とは、法務部門の精鋭や顧問弁護士が知恵をめぐらせて作りこんだいわば「ノウハウの結集」といえるからだ。そうした「宝物」をそのまま逃すのはあまりにもったいない。そこで、使える文言等はきちんとストックすると共に、自社が契約書を作成するに際しては、アレンジした上で借用したいところだ。

4.社内に積極的かつ効果的に宣伝する
せっかく四苦八苦して定型契約書を作成しても、社内ユーザに使用されないのでは、苦労した意味がない。従って、制定した定型契約書は、社内イントラネットなどを活用して、どんどん社内に広報するべき。それをきっかけに社内クライアントより「こういった契約書を作ってほしいのだけど」というリクエストを受けることもあるからだ。いわば、定型契約書は相手方だけではなく、社内に対する「法務部門の顔」ともいえる。

5.定期的にメンテナンスを行う
定型契約書は、「公開すればそれで終わり」というものではない。もちろん、関係者が寄り集まって、何度も議論しつくした上で(場合によっては顧問弁護士にも相談して)「この内容で確定して問題ない」ということで運用をスタートするのだが、使い始めてしばらくすると、「ここはこうした方がいいのでは?」「この条項はこう改めた方がいいかも?」という箇所は必ず出てくるもの。また、所管部門のビジネスモデルが変化する可能性も否定できない。そこで、状況の変化に応じて、絶えず定型契約書をアップデートし続けることが大事だ。このあたりはスマホのアプリと同じ。(そして、ユーザの高評価を得られるのはマメにアップデートするアプリであることは言うまでもない)

定型契約書は、いわば取引先に提示する「自社の顔」のようなもの。あまりにも未熟でお粗末な内容だとお話にならない。従って、こういった点に留意してきちんとした契約書を作成するように心掛けたいところだ。

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