企業法務担当者のビジネスキャリア術

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【書評】ゲームブック「展覧会の絵」森山安雄/子供の頃に読んだ本書を27年振りに再読しました

1.ゲームブック・バブルの時代
以前の記事で取り上げたことがあるが、私は子供時代の1980年代後半に、ゲームブックに夢中になったことがある。あの頃は、ゲームブックが大流行し、東京創元社や社会思想社を中心に様々な出版社からゲームブックが発売されていた。私も新刊が発売されるたびに次々と買い揃えたものである。 

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このゲームブック人気は、外国産ゲームブックの発売から火がついたのだが、私自身はどちらかというと不条理なバッドエンドが多い外国産のゲームブックはどうも苦手で、東京創元社の国産ゲームブックを愛好していた。なかでも鈴木直人の「ドルアーガの塔三部作」「スーパーブラックオニキス」「パンタクルシリーズ」、林友彦の「ネバーランドシリーズ」「ウルフヘッドシリーズ」、伊藤武雄の「紅蓮の騎士シリーズ」、茂木裕子「魔界物語シリーズ」などは全て買い揃えており、様々な冒険を楽しんだものである。

ちなみに、知る人ぞ知る社会思想社のゲームブック雑誌「ウォーロック」も毎号購入した時期があり、友人とテーブルトークRPGをプレイしたこともある。そうして1~2年はゲームブックに熱中していたが、やがてテレビゲームが全盛期を迎えると、私の興味と関心はそちらに向かってしまい、いつしかゲームブックを手にすることはなくなった。そして、手持ちのゲームブックやウォーロックは全て処分してしまった…。

そうこうするうちに、1990年前半にはブームは過ぎ去り、ゲームブックというメディアは市場から静かに姿を消していった。そして、ブーム収束後、東京創元社はゲームブックの出版事業から完全に撤退し、社会思想社はなんと倒産してしまう。ゲームブックは文字通りバブルとなり、はじけて消えてしまったのである…。

2.復刊された名作ゲームブック
それから数十年の月日が流れて、創土社からゲームブックが復刊されたことは、以前にご紹介したとおり。そのラインナップには、1987年に発売された国産ゲームブックの不朽の名作とも言うべき「展覧会の絵」が含まれているのだが、早速Amazonで購入し、2~3日ほどでクリアすることができた。 

展覧会の絵 (アドベンチャーゲームノベル)

展覧会の絵 (アドベンチャーゲームノベル)

 

「展覧会の絵」と聞いてクラシック音楽を思い浮かべた人もいるかもしれないが、そう、こちらはロシアの音楽家であるモデスト・Ⅱ・ムソルグスキー作曲の組曲である。

クラシックに詳しくない人でもあの有名な前奏曲を聞くとピンとくるだろう。本書は、この曲をモチーフにしたファンタジー要素が強いゲームブックである。

読者が操作する主人公は、記憶を失った旅の吟遊詩人で、ふと立ち寄った市場で出会った謎の商人に10枚の絵の世界を旅して、バーバ・ヤーガの12個の宝石を集めることを告げられる。そして、主人公の不思議な旅が始まる。主人公は記憶を取り戻すことができるのだろうか―――――――。

東京創元社のオリジナル版が発売された当初、私を含む当時のゲームブックファンを驚かせたのが、主人公にそれまで当たり前であったヒットポイントや武器などが設定されておらず、主人公が所有する琴がそれを兼ねているという点。すなわち、琴には「戦いの弦」「和解の弦」「魔除けの弦」の三種類の弦が張られており、主人公は要所要所でこれを使ってピンチを切り抜けなければならない。しかし、これらは無制限に使えるのではなく、使用回数が設けられており、いずれかがゼロになると、ただちにゲームオーバーになるという厳しいルール。つまりこの琴の弦がヒットポイントと武器道具を兼ねているのだ。

本作の魅力は、名曲「展覧会の絵」の世界観をモチーフにしたストーリー展開である。主人公は旅の吟遊詩人として10の世界を巡るのだが、これらはいずれも郷愁を誘うような、はかなくも寂しい幻想的な世界観を有している。私が子供の頃、オリジナル版をプレイしたときは、「展覧会の絵」のクラシック曲があると言われてもあまりピンとこなかったが、YouTubeで原曲を聞いてみると、なるほど、この物語にぴったりだ。


ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》から 「プロムナード」

3.まとめ
しかし、ゲームブックとはいえ、子供の頃に読んだ本を27年ぶりに再読できるとは素晴らしい時代になったものだ。本書は名作だからこそ、おそらく私と同じように子供時代に遊んだ関係者の働きかけによってこうして再び世に出ることができたのだろう。その努力には心よりエールを申し上げたい。

そのようなわけで、本書は私にとって子供時代を振り返るための大事な宝物だが、今度は捨てずに大切に保管しておき、忘れた頃に再プレイすることにしよう。