先日紹介した「人形劇 三国志」を兵庫県の伊丹ホールで鑑賞したので、その感想を少しだけ。
1982年から1983年にかけてにNHKで三国志をテーマにした人形劇が放映されたが、劇中では、本物の火や水が使用されるなどリアリティに富んでおり、完成度は非常に高かった。従って、子供だけではなく、大人も楽しめる作品で、国内の三国志人気を広めるのに大いに貢献したと言われている。実際、私自身も子供の頃にその再放送番組を見たことがきっかけで、三国志に興味を持ったぐらいだ。もっとも、あれから数十年が経過して、子供時代の思い出のある本作の「登場人物」とこのような形で再会できるとは思わなかったが・・。
公演開演の30分前に伊丹ホールに到着して、私が座った席は前列から4列目の真ん中という好ポジション。座席の埋まり具合はおおよそ6~7割程度だろうか。お客さんの年代層は圧倒的に年配者が多く、若い世代はあまり見受けられない。まあ、これは無理もないかもしれない。
14時になっていよいよ開演。まさかNHKのように紳助竜介が進行を務めるわけもいかないだろうし、どうするのかなと思っていたら、舞台脇で年配の講釈師の方が机をバンバンと叩きながら、物語を進めるというスタイル。また、舞台には2つのディスプレイがあり、要所要所で別場面や説明が入る。ちなみに、声優はオリジナルのNHK版と違っている様子。
劇自体は、途中休憩を挟んで、第一部(三顧の礼~赤壁の戦い)と第二部(出師の表~五丈原の戦い)で構成されており、三国志のハイライトシーンのみを描いている。従って、三国志前半の黄巾の乱・桃園の誓い・群雄割拠などのくだりは完全にカットされており、これは時間の関係上致し方ない。しかし、「三顧の礼」「苦肉の策」「泣いて馬謖を切る」「死せる孔明 生ける仲達を走らす」などの故事はしっかりと描かれていた。最後は、NHK版と同様に五丈原における諸葛亮の死去をもって幕を閉じるのだが、最後のカーテンコールの後は、主要キャストの人形達が人形師と一緒に客席まで降りてきて、通路をねり歩いてお客さんと握手するという粋なはからいが見せてくれた(その際、私も孔明と握手)。 三国志と言えば、ストーリーも結末もわかり切っているのだが、子供の頃にブラウン菅ごしに見た人形をすぐ間近で見ることができただけでも、貴重な経験をすることができたと思いたい。