企業法務担当者のビジネスキャリア術

氷河期世代の企業法務担当者がライフログとして日々の出来事を記録しています。2009年に開始したブログは16年目を迎えました。

【契約書】自分が作成した定型契約書を他社に完コピされる/これも評価の裏返しと好意的に考えたい

先日、社内クライアントから相談があって、取引先のA社から提示された秘密保持契約書(A社書式)の契約審査を依頼された。しかし、A社の契約書を読み進むうちに私と唖然としてしまった。これは過去に私が自社用に制定した秘密保持契約書と全く同じ文言だったからだ。自社の定型契約書は、イントラネットで公開されているが、勝手に改ざんされないようにパスワ-ドロックを施されている。従って、契約書の文字データを単純にコピー&ペーストすることはできない。

過去にA社とは当方書式で秘密保持契約書を締結していたが、どうやらA社の管理部門担当者は、「この秘密保持契約書をそのまま真似したものをウチの書式にしよう」と考えて、一言一句そのまま正確にタイピングするという荒技を使ったようだ。それがどのような経緯なのか不明だが、A社書式の秘密保持契約書として自社に「逆輸入」されてきたのだろう。

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契約書は、取引条件の前提・要件・効果などを記した客観的な文言の集合体に過ぎず、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法第2条1項1号)ではないため、著作物とは認定されない。従って、A社に対して著作権を主張する余地は全くないが、「真の作者」である私にしてみればなんとも複雑な心境だ。

まあ、実際のところ、私も他社から提示された契約書について、「これは使えそうな文言」とストックすることがあり、正直あまり強くは言えない。ただし、さすがに私にも企業法務担当者としてのプライドはあるので、最初から最後まで「完全コピー」したことはない。まあ、これも自分の「作品」に対する世間の評価の裏返しと考えれば、悪い気はしないが・・・。ここは広い寛容な精神をもって許容してあげるとしよう。