企業法務担当者のビジネスキャリア術

転職経験が豊富な企業法務担当者がライフログの一環として日々の出来事を記録しています。

【契約審査】当事者の主観によって履行される余地がある契約条項について

契約書とは、当事者間の取引において発生する問題を合理的な基準に基づいて解決するためのいわばルールそのものなのだが、相手方の提示する契約書の中には、客観的指標で構成されず、当事者の主観によって履行される余地がある契約条項が見受けられるときがある。 <例1…取引基本契約書より>
甲は、経済事情の変動により乙(=自社)の契約遂行能力が喪失したと合理的に判断しうるときは、いつ何時でも乙に対して通知の上、本契約を解除することができる。
この場合、「乙の契約遂行能力が喪失したと合理的に判断しうるとき」とあるが、具体的にはどのような状況にあるときなのかが厳密には不透明である。また、甲がそう判断すれば、いつなんどきでも契約を解除することができることになり、結局は解除権のイニシアティブは甲が握ることになる。破産、民事再生などのいわゆる客観的な事由の発生によって乙の契約遂行能力が喪失したと判断できるならばまだしも、本条では甲の主観的な判断によって契約が解除されうるというリスクが生じるため、これは削除または変更を要請するべき。 <例2…NON DISCLOSURE AGREEMENT(秘密保持契約書)より>
Information communicated by disclosing party to receiving party(=自社) will be deemed confidential information, if receiving party knows that such information is confidential or propriety or would be reasonably expected to understand the confidential or propriety nature of such information. (開示者によって受領者に対して開示された情報は、受領者が当該情報について機密性が高いと判断しうるか、または、機密性が高いであろうと合理的に予測できた場合は、秘密情報として取り扱われる。)
この場合、秘密情報であるか否かを裁定するのは、受領者に委ねられることになるため、受領者の負担が増加してしまうというデメリットがある。通常、秘密情報の開示の際には、開示者が開示媒体に「秘密」「極秘」などの明記を行うものである。そうすることによって、受領者は自らに課せられる秘密保持義務の対象を正確に認識することができる。しかし、本条項は、秘密情報の特定自体が受領者に委ねられており、合理的ではない。よって削除または変更を要請するべき。 このように、何らかの客観的な指標・基準によらずに、当事者の一方の主観によって判断・履行される余地のある条項は、自社に不利益となる可能性が生じるため、注意が必要である。 「人気ブログランキング」参加中です!1クリックお願いします! にほんブログ村 サラリーマン日記ブログ 戦うサラリーマンへ
にほんブログ村