今回は、ヘッドハンティングを受けて現職に入社する前に転職エージェントと会食した際のエピソードを紹介したい。
※私は転職回数は多い方だが、ヘッドハントされたのは今回が初めて。
1.転職エージェントとの出会い
そもそも私がこのエージェントA氏と知り合ったのは、転職活動を開始してから2週間が経過した頃。2月上旬に以下のメールを受信してその内容に驚いた。
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Sabosan様
●●●●のエグゼクティブエージェントのAと申します。突然のご連絡失礼いたします。
(中略)
私が所属する部門においては通常の●●●●とは別組織となり、企業様からお預かりする求人情報を起点とした、サーチ/ヘッドハンティング型のハイキャリア対象の転職支援サービスを展開しております。
この度、Sabosan様の豊富なご経験・ご実績を拝見し、是非ご案内したいポジション(法務部門マネジャー)があり、ヘッドハンティングのご連絡を差し上げました(本案件は限られた方のみにお声掛けをしております)。ご一読いただきまして、少しでもご興味ございましたらご説明の機会をいただけますと幸いです。詳細については直接お伝えしたく、是非一度お電話での面談の機会を頂けませんでしょうか。
(※求人内容の説明)
Sabosan様におかれては、上記企業様にて法務部門マネジャーの職責を担って頂きたいのですが、その他メールでお伝えしきれない部分もございますので、一度お話しさせて頂ければ幸いです。その上で、ご興味をお伺いさせて頂きたく存じます。
A
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この転職エージェントはテレビCMをバンバン放映しており、国内でも知名度は抜群。知らない人はいないといえるぐらい国内トップクラスの大手人材紹介会社。しかし、私にこのメールを送ってきたA氏の所属会社は、同じグループ内にあるハイキャリア専門の人材紹介会社で、ミドルマネジャーやエグゼクティブクラスなどの非公開求人を多く扱っているらしい。正直なところ、オファーされた求人内容は私にとって決して悪くない。もっとも、ヘッドハンティングといっても、その少し前にビズリーチを利用した結果がイマイチだったので、もちろん過大な期待は禁物だが・・・。
とりあえず、ヘッドハントを受けたという人生初体験および「ハイキャリア」というキーワードに興味を抱いた私は、A氏と何度かメールのやりとりを行い、2月上旬に自宅でA氏と1時間ほど以下のとおり電話面談を行う。
- 私の自己紹介
- これまでのキャリアについて説明
- 今回転職する理由
- 今後希望するキャリア
A氏によると、私の履歴書や職務経歴書がその人材紹介会社グループのデータベース内で公開されており、そのデータベースから私の存在を知ったとか。私は、前職時代において法務審査部門と知的財産部門に合計15年近く勤務しているが、A氏によると「東証プライム上場企業における一人法務としてオールラウンドに様々な企業法務案件(契約書・法律相談・法務研修・社内規程・訴訟・コンプライアンス)をこなしつつ、さらには与信管理や知的財産をも幅広く経験している珍しい御経歴に希少価値を感じております。正直なところ、Sabosanのようなユニークなキャリアの持ち主は転職市場にはなかなか流れてこないのです。これは逃してはならない人材と思い、早速連絡させて頂きました」との事。
・・・ふ~む、いきなりそう言われてもピンと来ないが、そういうものだろうか?自分でも珍しいキャリアの持ち主であることは自覚しているが・・・。そういえば企業法務担当者の求人案件は、特に関東圏では引く手あまたと聞く。
ともあれ、私にとっても願ってもない話なのでA氏のオファーを快諾した私は、二人三脚で転職活動を進める。すると、トントン拍子で話が進み、書類選考と2回の面接を経て、約1ケ月後には現職企業から内定を頂く。そして、前職企業に退職届を提出した後の引継ぎ期間中にAさんから一度会食したいというメールを受信する。というのも実はAさんとは電話やメールのやりとりはあったが、この時点では一度も会ったことはない。
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Sabosan様
退職お申出後も順調そうなご様子、何よりでございます。また、日程につきましても現職での節目となる1日にご一緒できること、非常にありがたく、当方も同日で問題ございませんので、当日を楽しみに致しております。ご快諾ありがとうございます!
場所についてもお店が決定次第追ってご連絡させていただければと存じますので、今しばらくお時間いただけますでしょうか。あまり堅苦しくなく、ざっくばらんにお話できればと思っておりますので、ぜひ楽しく語り合えたら幸いです。
改めましてよろしくお願いいたします。
A
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調べると、転職エージェントが内定者を食事に誘う理由は、①内定辞退を防ぐため、②入社後の早期辞退を防ぐためなど様々な理由があるようだ。もちろん、人材紹介会社にしてみれば、私が入社しないと手数料(私の想定年収の30~40%)を獲得できないので、それは理解できる。なお、入社後半年以内に早期退職した場合、紹介料の一部をクライアント企業に返金しなければならないのが業界慣習らしい。
私は、A氏とは電話とメールのやりとりだけで一度も会ったことはなく、また私にとっても大恩人になるため、喜んで会食に応じた。時期は前職の最終出社日の晩で、場所は大阪梅田のおしゃれな個室居酒屋。
そのようなわけで、店の前でA氏とようやくご対面。A氏とは2時間ほど雑談や転職時のエピソードを話で盛り上がった。もちろん会計も先方持ちで、経費で落とすのだろう。
2.セレンディピティとは
セレンディピティという言葉がある。「自分に訪れた偶然の出来事に基づく幸運な結果」をいい、一言で言い表すと「偶然(幸運)を自分の人生に生かす能力」とでも言えばよいのだろうか?私は、以前読んだ勝間和代の本でこの言葉を初めて知った。このセレンディピティは、近年のように特に変化の波が激しい時代(VUCA)では特に重要とされている。もちろん、運はあくまで一つのきっかけに過ぎず、最終的には運を引き寄せるための普段からの地道な努力が重要なのは言うまでもないが・・・。
思うに、今回のケースのように「運」というものは他人が「運」んでくることもあるのかもしれない。A氏にしてみれば、エージェントとしての日常業務(①求人案件にマッチする人材をサーチし、②ヘッドハントして内定者を無事に入社させて、③出来る限り早期離職させない)の一環だろう。しかし、私にとってはA氏は自分の人生を大きく変えてくれた大恩人としか言いようがない。そもそも私が転職エージェントに登録して、タイミング良くその個人情報を見つけたA氏が冒頭のようにヘッドハントしなければ、私は現在のポジション(法務部門マネジャー)についていなかったと100%断言できる。
・・・ほんの半年前までは我が身にこのような出来事が起きるとは想像すらできなかったが、これも人生の「運と縁」といえばよいのだろうか。人生何が起こるかわからない。しかし、ひとたび絶好のチャンスが到来すれば、それまでの環境とオサラバして新しくグレードアップした舞台にたった一人で立ち、自分の役割を演じ切る。それこそが人生の醍醐味ではないだろうか?
A氏と会ったのはこれが最初で最後の1回で、おそらく再び会うことはないだろう。しかし、私にとって人生の大恩人にあたる方なので(それを忘れないためこの記事を書いている)、改めてこの場でお礼を申し上げておきたい。