今回は、私が20代の頃に勤務していた司法書士事務所時代のエピソードを紹介したい。
1.お客さんと接する機会
当時働いていた司法書士事務所は某ハウスメーカーの下請事業者をしており、同社より多くの仕事を受注していた。特にメインの仕事は、大阪・京都・滋賀に一戸建てを建築したお客さんが住宅金融公庫(現:住宅金融支援機構)から融資を受けるため、本ハウスメーカーの斡旋により所有権保存登記と抵当権設定登記を行うというもの。
そのため、私は、登記申請に必要となる住民票や印鑑証明書などの必要書類をお客さんから入手するため、本人宅に電話をかけて事務所まで郵送してくれるようお願いしたりもしていた。ただし、抵当権設定登記に必要となる権利書については、さすがに郵送で送ることに抵抗を感じるお客さんも多く、そのような場合は、ご本人の自宅を訪問した上、権利書を直接預かりに行くしかない。
私も司法書士事務所に在職中、このような形で様々なお客さんとお会いしたが、本当にいろいろな方がいたと記憶している。
- お菓子とお茶を用意して丁寧にもてなしてくれる人
- 登記費用が高いから値下げしろと要求してくる人
- 駅まで車で送ってくれる人
- 世間話が異様に長い人
- これから抱える住宅ローンの愚痴を延々と続ける人
- 新築の一戸建を購入して幸せオーラ全開の人
2.資格試験受験者に対するイメージ像
なかでも印象的なお客さんが一人いた。その方は30代半ばぐらいだったと記憶しているが、以下のようなやりとりの会話をした記憶がある。
私「お客様の権利書を確かにお預かりしました。抵当権設定登記が完了次第、ご返却させて頂きます」
相手「いえいえ、よろしくお願いします。そういえば、私には司法書士試験の受験勉強をしている友人がいまして…」
私「ほう、そうですか~。偶然ですね、私もですよ。その方は何年ぐらい勉強されているのですか」
相手「もうかれこれ7,8年くらいになるんじゃないかな?」
私「なるほど、私も4年ほど勉強しております」
相手「しかし、司法書士というものはそんなにすごいもんなんですかねえ。弁護士や公認会計士も同じでしょうけど、資格試験というものは合格してナンボですよね?いつまでも合格しなければ、単なる受験生でしょ?本人もいい年して無職で収入ゼロだし・・・」
私「う~ん、そうですねえ(苦笑)」
そのあたりで適当に会話を切り上げて退散した私であったが、当時司法書士試験の勉強をしていたので、愛想笑いを浮かべるしかなかった私。同時に「一般的に世間の人が考えている資格試験専業受験者に対するイメージとはこういうものかもしれない」と悟った瞬間でもあった。本人は「人生をかけた大勝負」に取り組んでいるつもりであっても、傍目から見ると「ロクに働きもしないプータロー」と見られているのだろうか?それはそれで少し悲しい。
3.まとめ
当然ながらこれらの方々は、本当に短い時間だけお会いしただけだが、今思えば本当に貴重な経験をさせてもらった。いろいろクセのあるお客さんと直接接触して様々なやりとりができたので、交渉術や社交術が鍛えられたのだから。