企業法務担当者のビジネスキャリア術

氷河期世代の企業法務担当者がライフログとして日々の出来事を記録しています。2009年に開始したブログは16年目を迎えました。

【企業法務】社内クライアントとの打ち合わせをうまく行うための7つのコツ/企業法務担当者にとって社内クライアントとの打ち合わせは非常に重要なプロセスです

最近、契約書チェックや法律相談の関係で、社内クライアントからの数多くの相談を持ちかけられており、多くの打ち合わせをこなす日々が続いている。

 

これは企業法務担当者であれば、それほど珍しい光景ではない。 企業法務担当者にとって、こうした社内クライアントから相談を受けること(リーガルロイヤリング)は非常に重要なシチュエーションであり、絶対に避けて通れない。案件を受任した際に社内クライアントから過不足なく必要な情報を聞き出して実態を正しく把握しなければ、正しい答えを導き出すことが困難となるからだ。 今回は、この社内クライアントとの打ち合わせに関して、個人的に留意していることをご紹介したい。



1.5W2Hについて正確に把握する

例えば、その案件について初めての打ち合わせならば、当然ながらこちらは何の情報をもちあわせておらず全く白紙の状態である。しかし、その案件に関する情報を入手しているのは、当然ながらそれに関与している社内クライアントとなるため、経緯や現状などについて詳しく教えてもらう必要がある。特に重要なのが5W2Hのフレームワークだ。すなわち、Who(誰が),When(いつ),Where(どこで),What(何を),Why(なぜ),How(どのように),How Much(いくらで)について残らず聞き取ることが非常に重要。逆に言うと、これらの情報について全て入手することができれば、打ち合わせはおおむね成功といっても差支えない。なにはともあれ、今起こっている事実を正確に把握しなければ、対策の立てようがない。

 

2.要所要所で適切な質問を行う

質問というものは正しい情報を入手するための必要な武器となりうる。例えば、社内クライアントを打ち合わせをしていて、わかりにくい部分があるならば、要所要所で適切な質問を行うことが大切。私も新人の頃、その場の雰囲気に合わせてなんとなくわかったようなふりをしていたことがあったが、これはNG。特に社内クライアントが忙しい営業マンならば、後日にまたつかまえるのも一苦労であるため、不明な点が少しでもあるならば、その時点で貪欲に聞き出さなければならない。

 

3.法律用語はわかりやすく噛み砕いて説明する

法律知識は、企業法務担当者にとって「メシの種」であり、絶対に欠かすことができないものだが、圧倒的大多数の社内の人間にとっては、「法律」というものはやっかいで苦手な印象しか持ち合わせていないもの。そうした事実についておかまいなしに企業法務担当者が一方的に専門的過ぎる法律用語ばかり連発しても相手を混乱させてしまうだけだ。従って、ここは相手の立場にたって、難解な法律用語をわかりやすい言葉に置き換えて嚙み砕いて説明することが大切。

 

4.社内クライアントの言葉を疑ってみる

社内クライアントは、案件の当事者でもあるので、「これは絶対、ウチが正しいですよね!」「裁判になれば勝てますよね!」とどうしても当事者意識が強くなって客観的な判断ができない場合が多い。企業法務担当者がそれに引きづられて熱くなってしまうのはあまり望ましくない。もちろん、社内クライアントの味方ではあるのだが、ここは冷静に一歩引いて、第三者的な立場で客観視点を維持しなければならない。そのためには、目の前にいる社内クライアントの言葉や認識を疑ってみるといい。そして、「真実」をあぶりだすためにも様々な角度から質問を繰り出すのもオススメだ。すると、意外な事実が判明することも多く、正しい判断を行う際の一助となるケースも多い。

 

5.解決策はなるべく複数のオプションを提示する

社内クライアントとの打ち合わせも終盤になると、おおよそ、「この案件はこうして処理するのがベストかな」と今後の解決策が浮かび上がってくるもの。その際にできるだけ数多くのオプションを社内クライアントに対して提示できるならば、それにこしたことはない。例えば、「この問題についてはこうするべきです!」ではなく、「この問題への対応としては、AまたはBという選択肢があります。Aにはこういうメリットとデメリットがあって、Bにはこういうメリットとデメリットがあります。私としてはAをお勧めしますけど、最終的にはあなたに判断を委ねます」というように。このように企業法務担当者の一方的な押しつけではなく、企業法務担当者と社内クライアントが共同で1つの問題に取り組む姿勢を作り出すことが大切であり、企業法務担当者はそのために打ち合わせをうまく誘導していかなければならない。

 

6.今後のとるべきアクションを明確にする

社内クライアントとの打ち合わせというものは、単に情報を共有するだけではない。最終的には会社の方針を決定して具体的なアクションを起こすために行うものだ。(まれに「もう少し様子をみましょう」という結論に落ち着くこともあるが…)そういった今後の自社のとるべき行動や方向性について明確に決定することが重要。これを欠いたまま打ち合わせを終了してしまうと、いったい何のために時間を割いて打ち合わせを行ったのかわからなくなる。

 

7.社内クラアイントに好印象を与えるように努める

実は、私が最も重要視しているのがこちら。企業法務担当者にとって社内クライアントとの打ち合わせというものは、営業マンが顧客に自社商品を売り込むように、自分自身を売り込む場でもある。ここで、相手に悪印象を与えると「あんなヤツに二度と相談するか!」と次の仕事の受任に支障を与えかねない。従って、社内クライアントには「相談してよかったなあ」という良い印象を抱いて返ってもらうべく、社内クライアントに対して明るく誠実な態度で接することが大事。その繰り返しが社内クライアントの増加やより大きい仕事に恵まれるチャンスにつながるのだと思う。 

 

以上が私が社内クライアントとの打ち合わせ時に留意している点。普段より自席に滞在していることが多い企業法務担当者は「現場の生の情報」に接する機会が極めて少ない。打ち合わせはこうした情報に触れる数少ないチャンスだから、うまく取り組むことをお勧めしたい。