企業法務担当者のビジネスキャリア術

氷河期世代の企業法務担当者がライフログとして日々の出来事を記録しています。2009年に開始したブログは16年目を迎えました。

【資格】司法書士事務所の仕事内容とは?/元事務所経験者が実態を暴露します

1.司法書士事務所とは

先日の記事においても触れたとおり、本ブログにおいて司法書士事務所の仕事内容について簡単にご紹介したい。さて、私が勤務していた司法書士事務所は正社員3~4人、バイト5~6人の零細規模の事務所だった。規模的にはごくごくありふれたものだと思う。現在は、司法書士法人など大型化している事務所もあるだろうが、規模的には、多くても10人ぐらいのスタッフでこじんまり経営している事務所が大多数だと思う。

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2.不動産登記について

近年、過払い金請求の案件が増加しているとはいえ、司法書士のメイン業務は、やはり不動産登記。その内容は、個人や法人が保有する土地・建物の不動産に関する権利の設定・変更・抹消などを本人の委任を受けて法務局に登記申請すること。

例えば、新築一戸建を購入する場合、購入者は購入物件を担保に提供した上、銀行の住宅ローンを利用することが多いはず。その場合、表示登記・所有権保存登記・抵当権設定登記を行う必要がある(ただし、表示登記は土地家屋調査士が行う)。これらを本人が行うことはまれで、ほとんどが不動産会社が紹介する司法書士に依頼するケースが多い。一般の人が司法書士と接触するのは、このようなケースが大多数だろう。

3.商業登記について

私が働いていた事務所は、税理士事務所や会計事務所と連携する形で商業登記もこなしていた。具体的には、中小企業が顧問を務めている税理士・会計事務所から会社設立登記や役員変更登記の仕事を受任するケースが多かった。特に役員変更登記は簡単な仕事の部類に入るため、事務所にとっておいしい仕事だったと思う。しかし、現在は、会社法施行によって、非公開会社の役員の任期は2年から最長10年に延長されたため、役員変更登記の頻度も落ちているようだが。

4.供託について

司法書士試験に供託法があるように、司法書士の業務の一つとして供託があげられるが、実際の実務として行っている事務所はそんなに多くないだろう。しかし、私の場合、数少ない貴重なケースとして1件だけ経験したことがある。それは、不動産登記法によって認められたルールである設定者の単独による担保抹消登記申請のための供託だ。これは債権者の所在が不明で、債務者が債務を弁済できないため、債務者が利息を含めた金額を所管の法務局に供託した上、その写しを担保抹消登記申請に添付して債務者が単独申請してしまうというもの。私が経験したケースでは、明治時代に設定された債権額数十円の抵当権を抹消するために、数百円の供託を行ったと記憶している。

5.私が経験した仕事

①登記申請書作成
登記申請を行うためには、所定の書式に基づいて申請書を作成しなければならない。私が所属していた事務所では、ワープロ(パソコンではない)で申請書を作成していた。ただ、これらは定型文書で十分対応でき、住所・氏名・不動産情報などを打ち込めばすぐに完成する。申請書を打ち出した後、所定の登記印紙 を貼付し、住民票や印鑑証明書などの添付書類と合わせてクリップでまとめる。これで完成。慣れれば30~40分ほどで完成する。当時の先輩補助者は「プラモデルを作るようなもの」と発言したことがあったが、まったくそのとおり。

②登記申請(法務局回り)
現在は、郵送でも登記申請はできるのだが、私が補助者として働いていた当時は、その不動産を所管する法務局に行く必要があった。私が在職していた司法書士事務所は某ハウスメーカーの下請的な立場であったため、その新築物件が所在する大阪・京都・滋賀の法務局を回ったもの。朝イチで事務所を出発して、申請が終わって帰ってくるのは、早くても夕方になる。まさしく半日旅行的のような気分で宅急便のような仕事を行うのだが、運ぶものは人様の権利証や印鑑証明書であり、絶対に紛失できない代物。

さて、登記申請といっても、法務局の館内になるポストに放り込むだけなので、申請が終わると次の法務局に行かなければならない。よく行った場所は、京都の場合、丹波口・嵯峨・亀岡・宇治・木津・京田辺・丸太町等にある法務局で、滋賀の場合、大津・草津・守山・彦根・長浜・水口・近江八幡・八日市など。毎日のようにこれらを巡ったのだが、京都や滋賀の穏やかな風景に癒されたものだ。

いずれも、辺鄙なところにあるのだが、駅から自然を見ながらブラブラ法務局まで歩くのが個人的には楽しかったもの。

③市役所・区役所回り
不動産登記を申請するには、その種類によって住民票・印鑑証明書・戸籍謄本など添付しなければならない。それらの公的文書は本人が住所を構える所管の市役所・区役所でしか入手できないため、これまた補助者たる私があちらこちらの役所を回って入手したものである。当時はまだおおらかな時代で司法書士の保有する「職務上請求書」を使用すれば、役所も形式的なチェックで簡単にこれらの書類は入手できた。 しかし、その後本人でないのに不正に取得するなどの問題が発生したため、現在、この手続はかなり厳格になっている。特に戸籍謄本などは個人情報保護法上は「機微情報」とも称されるデリケートな書類であるため、司法書士が入手するにもそれなりに厳格な手続が必要となっているらしい。

④金融機関回り
金融機関より担保権設定登記を依頼された場合、その登記完了後に関係書類(登記済証、登記事項証明書等)を金融機関に提出しなければならない。そのため、登記完了後の書類を法務局からいったん回収し、事務所で整理した上、各金融機関に渡す必要がある。これまた、宅急便的な仕事であり、書類を渡すと「ハイ、終わり」となる。

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⑤権利証受領
ご存知の方も多いだろうが、担保権設定登記を行うためには、不動産物件所有者の権利証が必要になる。そのため、クライアントから権利証を預かる必要があるのだが、人によっては、事務所への郵送を嫌がり、直接に事務所の「預り証」と引き換えに渡すことを希望するケースがある。その場合、補助者である私が、「預り証」と 引き換えに権利証を受け取りにクライアントの自宅を訪問する。当時は、Googleマップなどの便利なものがなく住宅地図とにらめっこしながら、苦労してその自宅を伺ったもの。