企業法務担当者のビジネスキャリア術

東証一部上場企業に勤務する企業法務担当者がライフログの一環として日々の出来事を記録しています。

【プライベート】自動車事故の被害者になったが、最終的に保険会社から約400万の支払いを勝ち取った話。/企業法務担当者らしく知恵と度胸で保険会社とわたりあう

昨年起きた出来事。 

ある日、妻がマイカーを運転中に後方から直進してきた自動車に追突されるという事故に遭ってしまった。車は大破したが、妻は打ち身程度で骨折などの大きなケガはなく、数か月の通院で回復することができたのが不幸中の幸い。その後、私は、マイカーの所有者および妻の代理人として半年近く保険会社と交渉を行い、ようやく解決に至った。

1.経緯 ~企業法務担当者の矜持にかけて~

  • 妻の車が交差点の手前で一時停止して、歩行者の横断を待っていたところ、後ろからミニバンに追突されて、左斜め前方のポールに激突する。
  • 事故の原因は追突者の前方不注意で車内に設置していたドライブレコーダー(後方)には、速度を落とさずに突進してきた車がきちんと撮影されていた。従って、警察の現場検証もふまえて、加害者と被害者(妻)の過失割合は「10対0」という結果に。
  • 車(価格約300万)はそのまま販売店にレッカー車に持っていかれたが、追突の衝撃で前面が大破し、エンジンがむき出しの状態。販売店の話によると、「修理するのは相当の時間と費用を要する。また修理が完了しても不具合の可能性があるため、基本的に乗車はお勧めしない。新車を買い替えた方がいい」とのアドバイスを受ける。
  • 加害者側の保険会社と話をすると、「車両補償として180万と被害者の通院費実費しか出せない。」との回答。

もし、これが普通の人ならば、何も疑うことなく保険会社の言いなりになってしまうかもしれない。そして、車両価格の一部しか補償されないという不利益を甘受しただろう。しかし、こちらには何の落ち度もないのに、車両価格の6割しか補償されないのはあまりに理不尽。加害者側の保険会社のそっけない「塩対応」に完全に頭にきた私は、企業法務担当者の矜持とプライドにかけて、ありとあらゆる手段を惜しむことなく、全力で自力救済を目指すことにした。

 

2.私がとった行動とは ~あらゆる手段を用いるべし~

そうと決まれば、話は早い。ネットや本などで自分がとりうる選択肢を検討し、着実に実行するだけ。まあ、このあたりは企業法務のクレーム対応の仕事でよく行っていることで、特に違和感はない。「事実の確認➝ルールの選択とあてはめ➝相手方への意思表示」というパターン。

  1. 保険会社(被害者側・加害者側)二社の窓口部門をそれぞれ訪問して、保険契約約款を見せながら、状況と今後の方向性についてしつこく確認を行った(保険会社はかなり迷惑そうだったが)。さらに、妻から当時の状況をヒアリングして作成した自作の「事故報告書」を保険会社に提出し、被害者側の証拠資料として審査部門に渡してもらうよう依頼した。(もっとも、これらの一連の行為は、私にしてみれば、心理的な駆け引きの一種であり、保険会社に「コイツはうるさくて手ごわそうな奴」という印象を与えることが目的)。
  2. 自動車販売店に「次回の新車も貴社で必ず購入する」旨を確約して、保険会社に対して「今回の被害車両は客観的に判断しても全損相当である」と説明してもらう。
  3. 正式に弁護士を選任し、加害者側の保険会社との慰謝料請求の交渉を一任し、請求しうる最大金額の慰謝料を請求する。 

特に、3については、弁護士特約のありがたみをひしひしと感じた。確かに企業法務担当者である関係上、私は法律には詳しいが、弁護士資格を有していないため、保険会社との交渉では力不足。保険会社にしてみれば、クレーマーすれすれの小うるさい個人客としかとられないだろう。そう考えた私は、弁護士を選任して、慰謝料請求に関する一切の交渉を委任した。しかも、弁護士特約がついているので、その費用(=約30万円)は保険会社が負担してくれて、自腹で負担する必要はない。これはかなりのメリット。

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ちなみに、私自身も今まで知らなかったが、被害者が加害者(=保険会社)に請求できる入通院慰謝料の計算式は、保険会社基準(X)と裁判所基準(Y)があって、Yの方が金額は比較的割高に設定されている。しかし、このYという基準は、保険会社と交渉する場合、私のような一般人には使用できず、あくまで弁護士に限られている。なんとも不思議なルールだが、それが保険業界の慣習らしい。

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従って、弁護士特約さえあれば、こちらはコストゼロで、Yという有利な支払基準を使用して少しでも慰謝料を多く獲得できる。このメリットはあまりにも大きい。また、保険会社の説明によると、こちらが弁護士を選任しても、保険会社側は弁護士を選任しないので、ほぼ予想どおりに決着がつくのだという。私も保険業界については素人なので、なぜこのような二重基準があるのか、さっぱりわからないが、保険会社の本音としては、慰謝料の支払いは抑えたいというところか。 

そういえば、ピクサーの映画「Mr.インクレディブル」では、ヒーローを引退した主人公は、保険会社に勤務しており、上司から保険加入者に対する支払いをなるべく少なくするように命令されて、良心の呵責に苦しむというシーンがあった。まあ、保険会社も利益を追及する営利企業である以上、理解できないこともないが、いざ自分がそのような立場になるとさすがに腹が立つ。

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3.結末と教訓 ~保険はありがたいが、盲目的な信頼は禁物~

最終的には、保険会社から合計約400万(①車両補償として300万全額、②妻の通院費、③妻の通院に伴う慰謝料90万)の支払いを受けたが、当初、私が保険会社を訪問した際には、③の可能性については、全く説明されることはなかった。(保険会社を訪問した際、カマをかけて聞いてみたが、「そのようなことができるというのは聞いたことがない」との回答)。こちらが弁護士を通じて法的に請求して、しぶしぶ応じてくれたという印象で、このあたりに保険会社の本音が垣間見えてなかなかに興味深い。

仮に、私が最初から保険会社の言いなりになっていれば、③は受け取ることはできなかったのは間違いない。つまり180万しか受け取れず、220万も損していたわけで、やはり無知ほど怖いものはない。B to C取引における知識武装の必要性を再認識させられた。 

つまることろ、保険営業であれ、住宅営業であれ、証券営業であれ、B to C取引の場合、建前は置いといて、企業側の本音としては、「無知でこちらの言いなりになるユーザーの方がカモになる」というところか・・・。 


本音くん ~建前を使えない証券マン~

ともあれ、今回のトラブルは、自分なりに考えてなりふり構わずに行動したおかげで、ハッピーエンドに終わったわけだが、次の教訓をしみじみと感じた次第。 

  1. ドライブレコーダーは車両の前方だけではなく後方にも設置する。
  2. 自動車保険に加入する場合、弁護士特約を必ずつけておく。
  3. 保険会社の言いなりになるのではなく、自分で事実関係を確認し、保険契約約款を解釈して、解決策を検討する。そして、ダメ元でも良いから行動を惜しまない。

今回の事故は、2019年5月に滋賀県大津市で発生した自動車事故(園児二名が死亡)に比較的類似している。前方のドライブレコーダーを確認したところ、妻が運転していた車は歩行者に少し接触していたのだ。タイミングが悪ければ、あの悲惨な事故のように死者が出てもおかしくなかった。しかし、そうはならず、打ち身を受けた妻の通院程度で済んだのは本当に「奇跡」としか言いようがない。

最後になるが、(別に自動車事故に限った話ではないが)長い人生において、自分が悪くないのに理不尽なトラブルに巻き込まれることがあるかもしれない。しかし、そのようなときこそ、当人の器量(=人間力)が問われるとき。いくら己の不運を嘆いたところで、問題が勝手に解決するわけではない。従順に相手の言いなりになるか、それとも知恵と根性で行動を起こすかによって、その結末は大きく変わっていく。仮に、私が初動を誤って前者の選択肢を選んでいれば、間違いなくアンハッピーエンドだったはず・・・。

私としては、世帯主の立場として全力で家族を守るために、法的な理論武装としたたかな駆け引きによって強者と渡り合ったに過ぎない。今回、私が経験した一連の出来事が読者にとって何らのヒントになれば幸いだ。 

自転車事故の法律相談 (法律相談シリーズ)

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