企業法務担当者のビジネスキャリア術

転職経験が豊富な企業法務担当者がライフログの一環として日々の出来事を記録しています。

【企業法務】現役企業法務担当者のプロが伝授/社内研修のテクニックとは!?

1.社内研修が無事に終了

以前に話題にしたが、私が講師を務めた与信管理研修が2ケ月かけてようやく全て終了。

kigyouhoumu.hatenadiary.com

 

主催者側として、社内研修の段取りを整えるのもなかなか大変で、

  • テーマの決定
  • 研修資料の作成(PowerPoint)
  • 参加案内の発信(社内イントラネットで通知・メール)
  • 会場のセッティング
  • 予行演習(自宅)
  • 研修本番
  • アンケートの回収と反省点の改善
 
というプロセスを経ることになり、なかなか一苦労。それだけにようやくゴールにたどり着いた現在は、ささやかな達成感と満足感を覚えている。ふと思ったが、これって歌手がコンサートツアーを完走したときもこのような感じなのだろうか。

2.現役企業法務担当者が教える秘訣

企業法務担当者の業務の一つである社内研修では、コンプライアンス・法務・知財・与信などについて受講者に対して資料を用いて説明を行う。特にコロナ禍以降は、ZOOMやTeamsによるオンライン形式の研修が大半を占めるようになった。私の場合、研修講師は前職時代に15年以上のキャリアがあり、もうすっかり慣れたもの。北は札幌から南は熊本まで全国の拠点を回ったし、最大150人の前で一人でマイクを持って説明をしたこともある。このように様々な拠点でかなりの場数をこなしたので、人前で話すことは全く苦にならなくなった。

 
というわけで、今回はこれまでの経験から私が会得した研修テクニックを紹介しよう。
 
<ポイント①>資料に統一感を持たせる
まずは研修資料の中身の完成度はある程度大事。資料自体はPowerPointで作成するのは当然だが、私が意識しているのは、デザインに統一感を持たせること。スライドマスターを使って色・レイアウト・ロゴマークなどを画一的に配置し、一貫性を持たせる。これだけで、その資料は引き締まってみえるから不思議。 もちろんデザインだけではなく、中身も重要で、スカスカ過ぎてもNGだし、情報を詰め込み過ぎてもよくない。

 

※いずれも本記事のために作成したサンプル資料。
 
<ポイント②>事例を活用する
法務研修は法律がテーマになるため、どうしても内容は重たくなってしまう。その時点で抵抗感を抱く受講者は多い。そこで、私が考えたのが実際の具体的な事例(ケーススタディ)を用いること。過去に自社で発生した事例がベストだが、世間で話題になった他社の事例でも構わない。それを「経緯・結果・教訓」というストーリー性を持たせて3つのパートで説明する。これが私の研修の最大の特徴で、アンケートを回収するとやはり「事例が面白い、興味深い」という意見が圧倒的に多い。
 

※現在、世間で話題になっている某社の不祥事についてサンプルとして作成
 
<ポイント③>予行演習を繰り返す
私は、研修の本番初日の2~3週間前に資料を持ち帰って週末に自室で研修の予行演習を繰り返すようにしている。余白にアンチョコを記入しながら、所定の時間でどのようなシナリオで話すか試行錯誤しながら何度もトライ。そうして本番に臨むようにしている。ひとたび研修ツアーがスタートすれば、もはやそれは不要だが、やはり初回に対しては相当の下準備を欠かさない。
 
<ポイント④>冒頭で目的や概要を説明する(最初が肝心)
私の経験上、受講者が最も気にしていることは、研修内容そのものより「どれくらいの時間で終わるのだろうか」ということ。そこで、私は、冒頭で「研修の目的・前提事実・構成概要・所要時間」などのポイントをきちんと説明する。なによりゴールを提示しなければ、目的意識もないもまま研修に突入することになり、その効果は半減してしまう。

<ポイント⑤>参考用のWebサイトや動画を活用する
私は、「研修にはリアル感とライブ感が大事」という哲学を持っている。例えば、事前に配布した資料に沿って話を進めることはもちろん大事だが、予定調和的に進めても(実は話をしている私自身も)あまり面白くない。そのような受講者の予想を覆すために、話に関係があるニュースサイトやYouTubeの動画をスクリーンに流すということも行っている(Teamsなどのオンラインでも設定を変えれば、受講者のPCでも音声再生が可能)。そうすれば、下を向いて資料だけを読んでいる受講者をスクリーンに注目させることができるメリットもある。小細工だが、意外とこのテクニックは有効。

 

<ポイント⑥>アンケートからのフィードバックを次に生かす
私は、研修終了後、書面またはオンライン(Microsft365のForms)で受講者からアンケートをヒアリングしている。そこに研修内容の感想や今後希望する研修内容などを書いてもらえれば今後の参考になるからだ。これまでネガティブなコメントを書かれたことは少なく、
  • わかりやすい。
  • 大変勉強になった。
  • 事例(経緯・結果・教訓)が具体的で理解しやすかった。
  • いらすとやの使い方が面白い。
というフィードバックを受けると、研修の主催者側であるこちらも大変励みになる。そして、このようなフィードバックを次に生かすことが大事。
 

 
最後になるが、結局のところ、社内研修のプロとして自立するためには、成功と失敗を含めて地道に経験を積み重ねるしかない。それにつきる。そうすれば、いずれ自分だけの成功スタイル、いわゆる「勝ちパターン」が自然と形成されるようになり、あとはそれを継続的に改善していけばいいだけ。企業法務担当者にとって、法務研修は社内の各担当者と接して、顔と名前を売る良い機会。是非有効活用することをお勧めしたい。