企業法務担当者のビジネスキャリア術

東証一部上場企業に勤務する企業法務担当者がライフログの一環として日々の出来事を記録しています。

【企業法務】新卒採用において法務部門に配属されるための戦略とは/読者の方からの質問に対する私なりの回答です

先日、本ブログの読者と思われる方より以下のような質問を頂いた。

現在大学の法学部で勉強している者です。企業法務について調べていたところ、Sabosanさんのブログをみつけ夢中になって拝見させていただきました。質問なのですが、新卒で法務部に入る道は難しいのでしょうか?企業の各年の配属先などを見ているといないこともない気がするのですが。。また、業界によって法務部の規模に違いはあるのでしょうか?新卒で法務部を目指す者にSabosanさんからアドバイスをいただけると本当に助かります。

私のような中途半端なキャリアしか有していない者が人様にアドバイスを行うのは少々気後れするが、人様のお役に立てるならばと思い、私の考えを以下のとおり述べさせて頂きたい。ただし、これは私の独断と偏見であり、「この通りに行動すると必ずうまくいく」という保証はできない点についてはご了承下さい。

(質問1)新卒で法務部門に入る道は難しいでしょうか。
(回答)不可能ではないでしょうが、ハードルはそれなりに高いものと思われます。選考時に「私は法務の仕事がやりたい!」と企業に対して強い意思表示を行うことは応募者の積極性を評価される一方、会社によっては視野の狭さが忌避される可能性もあります。

私が聞くところによる、従業員が何千~何万という超大手企業の場合、新卒採用者のうち1人、2人を法務部門に配属するケースもあるようだ。しかし、毎年法務部門に新卒者を定期採用するのは、本当に少数の企業に限られるだろう。なぜなら、法務部門は直接的な収益を生み出す部門ではないため、それほど毎年補充する必要もないからだ。

また、中堅規模の企業になると、独立した法務部門そのものが存在せず、総務部、審査部、管理部などに企業法務担当者1~2名を配置する体制で運用するケースも多い。この場合、自社で企業法務担当者を育成することはほぼ不可能なので、手っ取り早く経験者を中途採用することもある。従って、「一人法務」の企業が新卒者を採用することはあまりないだろう。 とすると、大卒者が法務部門への配属を希望するならば、狭き門であることを承知で先にあげた大手企業に応募するしかない。

(質問2)業界によって法務部門の規模に違いはあるのでしょうか。
(回答)あります。業界によって規模は大きく違います。

これはその企業の属する業界にどれほど強力な規制法令が存在するかによって左右されることが多いと思う。例えば、銀行・保険・証券業界には金融商品取引法という強力な規制法令が存在するため、それらを遵守するべく一定規模の法務部門を整備せざるを得ない(会社によっては監査部門がそれを補うこともある)。また、製造業は独占禁止法が大きな影響力を有しているし、建設業には建設業法などの業界独自の規制法令が存在する。

このように、日本では企業が属する業界に応じて様々な規制法令が存在しており、それらの「厳しさ」に応じて、企業の法務体制も大きく変化する。これは私の感覚的な考えだが、監督官庁の事業者に対する規制が厳しい業界は、コンプライアンスに対する意識が高く、一定の法務部門を整備する傾向が高いように思える。ただ、この10年間で企業の法的リスクに対する意識は非常に高くなっており、業界問わず、法務機能に一定のリソースを投入する傾向が強まっているといえるだろう。

ちなみに、余談だが、以前に購読した企業法務に関する書籍において、「企業は従業員300人につき1人の企業法務担当者を配備することが望ましい」という記述を目にしたことがある。これはあながち外れていないような気がする。なぜならば、従業員が多ければ多いほど、企業規模が大きいというあらわれであり、その結果、様々なリスクに直面する可能性が考えられるからだ。

ただ、ここで強調しておきたい点として、企業規模の大小と法務業務のやりがいは決して比例するとは限らないということだ。これは某大手メーカーの法務部門で働いた経験のある知人から聞いた話だが、その法務部門にはまるでお役所のような官僚的風土があり、契約書の単なる表記についてまで上司の細かいチェックが入り、当人は辟易したという。現在その知人は、某IT企業に一人法務として勤務しているが、「上司のしょうもない(?)指摘から解放されて、自分がある程度の裁量をもってスピーディに仕事を進めることができるのが楽しい」との事。こういうこともあるため、大手企業の大規模な法務部門で勤務することが本人の幸せ(?)に直結するとは限らないと思う。

(質問3)新卒で法務部を目指す者にSabosanさんからアドバイスをいただけると本当に助かります。
(回答)自分なりの戦略をもって情報収集や自己学習を行った上、トライ&エラーを繰り返すしかないと考えます。しかし、法務部門への就職にこだわるあまり、大切な「新卒カード」を無駄にするべきではないとも思います。

それなりに厳しい道であるが、それでも新卒採用時に法務部門への配属を目指すならば、以下のようなアクションをとってみてはいかがだろうか。

①情報収集
まず、独立した法務部門を有する企業をリサーチしなければならない。そのためには、会社四季報を購入した上、ホームページの「会社概要」などに法務部門が存在する企業をリストアップする。また、会社によっては、新卒採用者向けコーナーで現役企業法務担当者の生の声を紹介するケースがあるが、こういった企業は新卒者を法務部門に配属させる意向があるというあらわれではないだろうか。
 
②自己学習
私が新卒採用を行っている企業の法務部門マネジャーならば、応募者に対してビジネス実務法務検定2級の資格取得を求めたいところだ。その他、法務系の資格もそれなりに数多くあるので、取得しておけば、履歴書に箔がついて、書類選考時には優位に働くかもしれない。

また、英文契約書を取り扱う際には、一定の英語力が求められるのでTOEICのスコアが高いに越したことはないだろう。さらに、昨今では会計(ビジネス会計検定)やITリテラシー(WORD、EXCELなど)も求められるので、これらについても自力でスキルアップして、応募企業にアピールして損はないと思う。

③応募
これらをふまえた上で、ターゲットを特定した企業に応募していく。特に面接では自分は「法学部で学んだ法的知識を生かして御社の法務部門で働きたい」ということをうまく自己アピールしていかなければならない。もちろん、不採用が続くこともあるだろうが、気を取り直して次の企業に応募するという、タフネスさも必要だ。 また、運悪くその年には法務部門の採用を行っていない場合、総務部門・知的財産部門・品質保証部門などの少しでも法律がらみの部門に潜り込んで、そこで一定の実績をあげた上、会社に対して法務部門への異動願いを打診するのも1つの方法だ。うまくいくとは限らないが、会社には人事異動はつきものだし、むしろ幅広い経験と視野をもった人材の方が優れた法務パーソンとなる可能性もあるからだ。

以上が私なりの質問者様に対する回答だが、私の拙い経験や考えが一助になれば幸いだ。 

図解でわかる部門の仕事 新版 法務・知的財産部

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