企業法務担当者のビジネスキャリア術

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【キャリア】ダイキン工業が役職定年を廃止/組織活性化と個人のモチベーションの狭間で

先日ニュースで見つけたのがこちらの記事。空調メーカーのダイキン工業が今年4月から役職定年(ポストオフ)を廃止したという。

 
 
また、同社のIRにもその内容が公表されている。
 
 
役職定年とは課長、部長などの役職者が一定年齢に到達すると、そのポジションから降りて一般社員(非管理職)に戻るという制度。定年(60歳)になる前に強制的に役職者から降りてもらい、次世代にポストを譲ることで、ポスト不足解消や人件費抑制が目的とされる。いわば、会社が決める椅子取りゲームのルールのようなもの。人員に余裕があってポストが不足しがちの大企業が役職定年を採用していることが多いが、近年大和ハウスやNECなどの大手企業で廃止の動きが増えているようだ。その理由としては当人のモチベーション低下防止らしいが、何より近年の人手不足やジョブ型移行の影響もあるのだろう。
 

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私がかつて勤務していた前職企業(東証プライム上場)では、課長56歳・部長58歳という役職定年制度が設けられていた。従って、その年度(4月1日~翌年3月31日)内に課長が56歳、部長が58歳の誕生日を迎えた場合、当人はその年度の末日(3月31日)に役職定年となり、一般社員に戻ることになる。その結果、年収も1~2割ダウン。「●●課長」「●●部長」と呼んでいた人が4月1日以降は「●●さん」になるわけで(=組織内ヒエラルキーが下層へ移動)、若干の違和感と気まずさが起きるのはどうしようもない。例えば、営業部門は、本人の役職定年と同時に別拠点にいち営業担当として異動させるという奇策で、その気まずさの解消をはかっていた。非営業部門の場合、この方法はとりにくいが・・・。もっとも、今回のニュースにあるとおり、前職企業も将来的にはいずれ役職定年を廃止する動きにシフトするかもしれない。実施のタイミングによってはある時点をもって役職定年になる人/ならない人が発生し、そこには悲喜こもごもの人生ドラマが生まれることだろう。

この役職定年という制度は1980年代以降から始まった制度と言われるが、それぞれ長所(組織内における新陳代謝)や短所(当人のモチベーションの低下)があるのは言わずもなが。仮に当人が超有能で人格的にも優れたスーパーマネジャーならば、56歳と言わずに、定年までそのポストに居続けた方が望ましい。しかし、そうでない人(例えば、典型的な老害タイプ)ならば、早くその地位から引きずり下ろした方が周囲や組織にとってハッピーなのは言うまでもない。このように役職定年という制度は良い面と悪い面がどうしても発生してしまう。
 
一方、私が勤務する現職会社は、前職企業と違って役職定年という制度は存在していない。ただし、自分に付与された職位や権限には責任が伴うことはもちろん自覚している。私としては老害には絶対になりたくないし、「生涯現役」を目指して、プレイングマネジャーとして常に新しい知識や技術を学び続けていくつもり。
 

 

このように、役職定年とは、まさしく当事者たちが過ごした時代の大半がそうであったように「ザ・昭和」を象徴するシンボルの一つ。それが令和になって徐々に消え去ろうとしているのを傍目から眺めていると、文字通り時代が変わりゆく姿を垣間見ているようで、なにやら感慨深い。もしかしたらコロナ禍と同じように、あと5年や10年もすれば「そういえば、昔そんな制度があったよね」という思い出話の一つになるのかもしれない。