企業法務担当者のビジネスキャリア術

氷河期世代の企業法務担当者がライフログとして日々の出来事を記録しています。2009年に開始したブログは16年目を迎えました。

【企業法務】ユーモラスなCMで有名な日清食品がまさかの独禁法違反/そんなコンプライアンスで大丈夫か?

1.まさかの独占禁止法違反

先月にニュースに取り上げられていたので、ご存じの方も多いはず。カップ麺の大手メーカーである日清食品が独占禁止法違反で公正取引委員会から警告処分を受けている。
 
 
本件はいわゆる「再販売価格拘束の禁止」に該当。一般的に、メーカーは卸売事業者や小売事業者に商品を販売した場合、もはや所有者ではないので、これらの事業者の価格決定には関与できない。にもかかわらず、メーカーが相手方に商売上の不利益(リベートの支払減額・中止や販売終了)を課すことで従わせるのは違法となる。あまりにベタなケースなので、企業法務担当者である私も「大手企業がこんな典型的な行為を行うとは・・・」と非常に驚いた。
 

※いらすとやを使って今回の事例を図解してみた。
 
 
以前に何かの記事で目にしたことがあるが、日清食品は充実した法務部門を有しており、グループ全体に十分な法務体制を敷いているはず。例えば、法務研修等で従業員に対して独占禁止法についても教育していただろうに。にもかかわらず、このような出来事が発生したのは、一体なぜだろう?
 

www.nissin.com

 
今回の不祥事を受けて、日清食品の法務部門は独占禁止法を中心としたコンプライアンス研修などを実施するだろう。私も前職時代に似たような事例で一人で法務研修で全国行脚したこともある(それをきっかけにプレゼンスキルが飛躍的に向上し、個人的には有意義な経験だった)。それはそうと、今年は大手企業が公正取引委員会に摘発されるケースが目立つような気がする。例えば、3月には下請企業に支払代金の減額を行った日産自動車が下請法違反で同じように公正取引委員会から処分を受けている。
 
このような日清食品や日産自動車の違反事例をふまえると、充実した法務部門を有する大手企業といえどもコンプライアンス的なコントロールは現実的に難しいことを思い知らされる。かといって全く何も手当しないわけにはいかないので、こうした不祥事が発生するたびに法務研修やルール作りを進めていくしかないのだろう。
 

2.その一方で…

今回の日清の不祥事は、企業法務担当者である私にとって残念な出来事だが、日清自体には決して悪いイメージを持っていない。というのも日清はいわゆるユーモアに富んだ「攻めたCM」がとても多いから。関西弁で言うと、いわゆる「おもろい会社」ともいえる。
 
 
過去に名探偵コナンの犯沢さんと謎肉を絡めたCMをWEBで見たことがあるが、あれは爆笑もの。「こんなぶっとんだCMを出してくるなんて、日清は懐の広い(?)会社だなあ」と好感を抱いた記憶がある。法務部門もコンテンツのライセンス契約書などで活躍したことだろう。企業法務担当者としては少しうらやましい。
 
 
そして極めつけが、最近になって公開された特上カップヌードルのこちらのCM動画。ネットミーム界で絶大な知名度を有するエルシャダイの「そんな装備で大丈夫か?」とまさかのコラボが実現。
 
 
ちなみに、「大丈夫だ、問題ない。」は汎用性が非常に高いマジックワードなのはご存じの通り。LINEスタンプも使用している私。

※たま~にこれらのスタンプを妻に送りつけてウザがられる私。だが大丈夫、問題ない。
 
 
恐ろしく目のつけどころが良いので、どうやら日清の広報部門には相当な切れ者(?)がいるようだ。まさか今の時期になってギャグ的要素たっぷりのコラボCMを繰り出してくるとは・・・・!この「変化球」にはさすがの私も予想外。ま、まさか、今回の独禁法違反による世間のイメージ悪化を少しでも減少させるために意図的に投入してきたとか!?(なわけないか)

 

 

せっかくなので、これらの特上カップヌードルを複数の店舗で購入して(ついでに再販売価格も要チェック)食べ比べしてみるか。ともかく、同じような時期に正反対のニュースが飛び込んできた日清食品。いろいろな意味で今後の動向を見守っていきたい。
 

※特上なだけあって、4つでそれなりに良いお値段がするけれど、大丈夫、問題ない。