タイトルに興味を持って図書館で借りてきたのがこの一冊(現在、Kindle Unlimitedでも読むことができる)。
起業というと「一国一城の主」「サクセスストーリーへの第一歩」というポジティブな印象を受ける人が多いと思う。しかし、本書はそうしたイメージを吹き飛ばすほどの起業のリアル(特に失敗談)を描いている。
特に、本書で一番印象深かったのが、フランチャイズ・ビジネスの実体だ。著者いわく、フランチャイズ・ビジネスとは、本部が加盟店にリスクを押し付け、その利益を効率よく吸い取る一種の吸血鬼ビジネスだという。つまり、本部にとって、加盟店は本部の出店リスクを肩代わりするカケ捨て保険のようなもので、加盟店オーナーは開業資金を出し、経営責任を負わされてしまう。ただし、個人的にはフランチャイズはてっきりコンビニぐらいだと思っていた。
しかし、意外とそうではなく、保育所・塾・クリーニング・家具用品・デイサービス・居酒屋・100円ショップなど我々が身近に接するあらゆるジャンルにフランチャイズ・ビジネスは存在している。例えば、日本フランチャイズチェーン協会の正会員リストを確認すると、「え!この会社もフランチャイズをやっているの?」というのがゴロゴロ存在している。
ただ、本書の第4章と第5章で詳しく紹介されているが、フランチャイズには加盟店にとって様々な罠がある。例えば、商品の仕入れ・販売から手数料をピンハネされる、契約更新の改修費・脱退時の違約金などを徴収されるというもので、加盟店にとって不利な条件となっていることが多い。
そして、本部の本音は、加盟店とのフランチャイズ契約書にあらわれるもの。私のこれまでの企業法務歴を振り返っても、フランチャイズ契約書は一度も目にしたことはないのだが、多くは加盟店にとって不利な条項のオンパレードらしい。こういった契約書は、本部が自らの収益を確保するために、ありとあらゆる状況を想定して用意周到に考え抜いて作成した傑作なのだろう。
本書では、フランチャイズ・ビジネスで失敗しない方法として、「契約書をきちんと読んでリスクを理解すること」と提言している。人生をかけて起業するのだから、費用を惜しまず弁護士にきちんとチェックしてもらうべきだと。
しかし、実際のところ、いくら加盟店に不利な箇所を発見したとしても、本部が条項の修正に応じることは相当厳しいのでは?結局のところ、フランチャイズ・ビジネスを行うならば、加盟店は不利な条件を飲まざるを得ないのが実状ではないだろうか。