1.最近読んだ契約本
企業法務の仕事の花形と言えば、業種や規模を問わず、契約業務なのは言うまでもない。かくいう私もこれまでの法務人生で数多くの契約書(和文・英文)を作成してきた。また、このブログを長年継続してきたせいか、文書力もかなり鍛えられたので、それも良い影響があるような気がする。
そんな中、最近書店で購入して一気読みしたのが、こちらの書籍。
本書では、契約業務について、契約書の意義(第1章)、契約審査受付~契約審査~契約締結~契約管理の流れ(第2章)、契約実務とテクノロジー(第3章、第4章)について、網羅的に解説されている。これから法務を担当する人はもちろんの事、ベテラン法務パーソンにとっても得ることは多いはず。このような体系書を読み込んで、経験から得た知識やノウハウを再整理するにはうってつけの一冊。ざっと一読したが、もう一度じっくりと再読するつもり。
2.定型契約書の社内公開方法
一方、現在自社における定型契約書(複数)の改定作業を進めている。ほぼ最終稿が完成間近で、近日中に社内でオープンする予定。ちなみに、定型契約書を社内で公開する方法といえば、会社によって様々だろうけど、ある程度の規模以上ならば、自社のイントラネットで公開する会社が大半のはず。その際に法務部門で悩みの種の一つがどのようなファイルで定型契約書を公開するかということ。例えば、その方法として、
①WORDファイル(編集可能)を社内公開する。
→全てが編集可能なので、法務部門があずかり知らぬところで条項が改変される可能性あり。②PDFファイル(編集不可能)で社内公開する。
→改変は防止できるが、本番使用時には社名や契約期間を法務部門で保有しているWORD版にいちいち入力しなければならない手間が増える。
①②の方法は、いずれも一長一短があり、不便な点がある。そこで、私が前職の法務審査部門に所属していた際に思いついたアイデアを紹介しよう。それは、
③文書保護機能を使用してWORDファイル(一部のみ編集可能)を社内公開する。
→社名や契約日のみ編集可能とし、それ以外の箇所は編集不可にする。所管部門はイントラから定型契約書データをダウンロードして、社名や契約日を入力し、押印直前に法務部門がチェックする。
というもの。こうすれば、①②の問題を解消することができる。具体的にはWORDの標準機能であるフォームを使う。こちらで相手方の社名や日付しか入力できないように設定し、「校閲」→「編集制限」でPWロックをかけて文書保護をすれば、WORDのツールバーがグレー表示となり、当該箇所しか編集できないようになる。私はこの方法をたまたま図書館で借りたWORD解説本で知り、契約実務に生かすことにした。従って、前職の定型契約書の大半はこの方法でイントラネット(Microsoft 365 Sharepoint)で社内公開されている。もちろん、その解除PWはオープンにはしていない。
ただ、自社の定型契約書を所管部門が相手方に提示したところ、条項の変更要請を受けた場合、別途相手方から要望箇所をヒアリングしてこちらで反映させるが、①を提示するしかない。従って、あまりに一方的に自社有利な定型契約書だと、逆に手間が増える可能性があり、その折り合いをつけるのが難しい。
ささやかだが、こうしたITテクニックを使うだけで、定型契約書の改ざんリスクに備えつつ、業務効率は維持できるので、興味のある人は試してみてはどうだろう。