甲(=売主)は、本契約の履行が天災地変、戦争、暴動、内乱、通信回線の事故、公権力による命令処分、その他戦争行為など不可抗力により遅延または不能となった場合には、免責される。2.現状況下において重要性を増した条項 この不可抗力免責条項については、以前の記事において紹介させて頂いた「契約実務と法」という書籍においても詳しく説明されている。私もこの本を読んで、自社が売主となる取引基本契約書には忘れずに明文化するようにしている。とはいうものの、内心では「果たして、日本においてこのような天災地変が起きるのだろうか」と疑問に思ったりもしていた。 しかし、3月11日に発生した東北関東大震災によって、そのような考えは覆されてしまった。地震そのものによって発生したライフラインや工場設備に対する損害だけではなく、今後は関東地方における計画停電の実施によって、メーカーの生産・物流体制にはかなり深刻な影響を受けることも推測される。従って、法務担当者にとってこの不可抗力免責条項というものは、にわかに重要性を帯びることになるのではないだろうか、と推測する。 もっとも、たとえそのような事情においても、「契約書で不可抗力免責条項が規定されていますから、当社は責任を負いません」という一辺倒では、相手方との長期的なビジネスに支障が出るだろうし、実務レベルでは例えば営業部門同士が双方にとってうまく折り合いの対応策を協議により決定することも多いだろう。しかし、それすら合意に至らない場合には、本条項が相手方に対する「最終的な武器」となりうるかもしれない。 英文契約書などでも、「GENERAL TERMS(一般条項)」の一つとして、不可抗力免責条項である「FORCE MAJEURE」が定められていることが極めて多い。これは国際間取引ならば、様々なリスクが想定されるため、無理からぬことなのだが、まさか国内取引において発動することになろうとは…。 いずれにせよ、自社が売主(サプライヤー)となる場合には、この「不可抗力免責条項」の有無やその内容について留意しておく必要がありそうだ。
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