企業法務担当者のビジネスキャリア術

東証プライム上場企業に勤務する企業法務担当者がライフログの一環として日々の出来事を記録しています。

【企業法務】日本M&Aセンターの不正会計問題について思うこと/上場企業による契約書偽造という前代未聞の不祥事

1.またまた法務求人を発見

例によって、ブログのネタにするべく、DODAの企業法務担当者の求人情報をチェックしていると、こちらの会社を発見。
doda.jp
募集要項を引用すると、以下のとおり。   
【大阪】法務担当 ※M&Aに関する専門知識を身に着けられる/日本M&AセンターHD100%出資■業務概要:
M&Aは非常に高度な専門知識を必要とされます。M&Aに関する専門部隊として高い専門性を持つコーポレートアドバイザーという立場で当社のM&Aコンサルタントと共同してディールを遂行して頂きます。
■業務詳細:
・ドキュメンテーション(書類作成):M&Aを実行するための契約書やその他の書類の原案作成
・ナレッジマネジメント:当社のM&A関連ノウハウの創出、整理、蓄積、共有化に関する業務
・その他当社コンサルタントに対する支援業務
・契約法務(M&A契約審査、ドラフト補助 等)
・その他コーポレート法務
■組織体制
配属部署:日本M&Aセンター コーポレートアドバイザー統括部 法務部
大阪:3名、東京9名
■業務の魅力:
・M&A未経験からM&Aに関する法務知識を身に着けることが可能です。
・通常業務以外にも複数のプロジェクトが走っており、プロジェクトによってはチームメンバー以外と仕事をすることもあります。通常業務の他にナレッジデータベース構築や社内勉強会なども行っており能動的に業務に取り組める環境です
・FAS系との大きな違いはディールの一部だけでなくすべてのM&Aのプロセスを経験できる点です。そのため専門家としての知見が早期に高まります
■キャリアパスについて:
当社グループでは、企業が存続・発展していくために必要な経営課題を、様々な角度からサポートしています。ジョブローテーションによって総合力を身につけるか、興味のあるアドバイザリー領域で専門性を深めるか。個人の目指す成長ビジョンに沿ったキャリア形成が可能です。また、グループ会社への異動という選択肢もあり、ご自身の希望に沿ったキャリア形成ができるよう支援しています。
■同社の強み/ネットワーク網:同社には、全国の公認会計士・税理士が設立した約230の地域M&Aセンター/提携地域金融機関240行庫/商工会議所等という、国内最大級の情報ネットワークからM&A情報が寄せられます。同社は希少性の高いM&Aの譲渡情報を常時200件以上有しており、情報保有面で日本最多クラスのM&A仲介会社です

東京9名、大阪3名で構成される法務部で、なかなかの規模。勤務場所である大阪支店は、梅田阪急ビルという超一等地。同社はM&A仲介業務の大手で、私も名前だけは知っている。Openworkなどのクチコミサイトを確認すると、営業マンはかなりのハードワークながら年収1000万円も超えるプレイヤーもざらに存在する様子。実際、過去の有価証券報告書(2021年6月24日提出)を確認すると、平均年収は1243万(平均年齢34.3歳)とある。従って、給与水準は相当なものだ。

同社のPLを確認したところ、2022年3月期の決算は、売上404億 営業利益164億で、利益率が非常に高い(営業利益率は40%で、メーカーなどでは到底考えられない高収益体質)。近年は連続して増収増益で、業績は絶好調。
 

2.不正会計問題が発覚

ところが、もう少し調べてみたところ、どうやら同社は昨年秋に不正会計が発覚して、社内で大問題になっているようだ。 

www.businesslawyers.jp

 

 その不正会計問題の概要は、おおむね以下のとおり。

  1. 同社は、連続して増収増益を実現しているためか、経営陣から営業現場に対して相当強いプレッシャーがかけられていた模様(東芝の「チャレンジ」と同じ構図?)。
  2. それに加えて営業担当者は、設定した目標をクリアしなければ、インセンティブをもらえないため、売上を前倒し計上をせざるを得ない状況に。
  3. そのため、営業担当者は、業務フローの一環である社内システムにアップロードするM&Aの最終契約書について、過去の契約書(NDAやアドバイザリー契約書)の記名押印データをコピー&ペーストで再利用することで、締結済みの契約書を偽造(!)していた。
  4. 会社は、それに基づきクライアントに対する請求書を発行し、売上計上を行っていたが、そのあたりについて、特にダブルチェックは行われていなかった。

 

東証プライム上場企業が組織ぐるみで、契約書の偽造と不正会計を行っていたわけで、本来あってはならない不祥事。2022年2月14日に弁護士・会計士を中心とした調査報告書を確認したところ、固有名詞が行きかう生々しい内容はまるでドラマのようだ。

M&Aの仲介業務がビジネスモデルである同社の定型契約書は、おそらく①秘密保持契約書、②アドバイザリー契約書、③最終基本契約書だと思われるが、法務部門はその作成・修正はともかく、締結後の原本管理などにはあまり関与していなかっただろうか?企業法務担当者としては、どうもこのあたりに違和感を感じてしまう。

 

ともあれ、同社は、全社一丸で再発防止を講じるべく、 監査部門(コンプライアンス統括部)の設置、全社員ミーティングや役職員の人事処分などを実施。8月5日には、同社HPにおいて、2023年3月期 第1四半期決算説明会のアーカイブ動画が公開されている。その動画では、代表取締役自らが今回の不祥事について説明するという前代未聞の内容。

 

45分という長編動画で、代表取締役は、当初おごそかに再発防止策の説明を行っていたが、後半に進むにつれて調子が上がってきたのか、36:05あたりの指パッチン、38:19あたりのはっちゃけ具合(?)がなかなか面白い。いずれにせよ決算説明会のIR動画としては(いろいろな意味で)かなりレアな内容

企業法務担当者である私にとって、この不祥事における法務部門の関与具合が気になるところだが、調査報告書では特に説明はなされていない。ただ、契約書の確認体制の不備が今回の不正会計の根本原因であり、これからは監査部門だけではなく法務部門の支援や関与も求められるのではないだろうか。