かなり以前の事だが、年末に録画したNHK番組「COOL JAPAN」を妻と鑑賞した。この番組では、複数の外国人コメンテーターが自国の視点から日本の慣習やしきたりについて議論するというコンセプト。日本人が気づかない新しい視点をもたらしてくれることもあり、なかなか参考になる。この回のテーマは「別れ」。
番組内では、日本人が会社を退職する際に同僚にお菓子をくばるという行為が外国人には奇妙に感じられていた。外国人コメンテーターから「本人はこれまでの労働で会社に十分に貢献していたのだから、なぜ退職する際に自腹でお菓子を買って配布するのか?Why~?意味がワカラナイ」と喧々諤々。う~ん、まあ確かにそのとおりなんだけれど・・・。過去の自分の経験を振り返ると、退職した人(特に女性)は、お菓子を配布していたような気がするが、理由までは考えたことはなかった。
※ちなみに私の机にはカロリーメイトが山のように入っており、毎日夕方に少しずつ消化している。
もっとも、私が昨年5月に現職に転職するため前職を退職した時には、周囲の同僚にお菓子を配布した。実は、当初は全くそのつもりはなかったが、妻から強く言われたので、しぶしぶそのとおりにしたというのが真相。面倒くさがりの私は「わかったわかった、任せるので良きにはからえ」とお菓子のチョイスを妻に丸投げしたところ、後日にかかった費用は妻からきちんと請求された(泣)。
COOL JAPANの解説者は、退職時にお菓子を配るという行為には、本人が会社という共同体(コミュニティ)を離脱するにあたり、「このお菓子を食べて飲み込んで消化したら、私の事はどうか忘れて下さい」という意味がこめられているというセンチな解説をしていた。もっとも、ドライでせちがらい世の中だし、別にお菓子を配ろうが配るまいが、ひとたび会社を退職すれば、翌日から「過去の人」として扱われると思うが・・・(もっとも、そんな事いちいち気にしていたら人生をかけた転職活動なんぞできはしないが)。
外国人からしてみれば、確かに奇妙(?)ともいえるこの風習は、根本的にはメンバーシップ型とジョブ型の雇用形態に帰結するような気がする。日本の会社は圧倒的大多数がメンバーシップ型であり、「どのようなスキルでどのような職種につくか」というジョブ型はまだまだほど遠いのが現状。従って、仕事のスキルそのものよりも、「共同体でうまくやっていく(=村にうまく溶け込む)能力」が最重要視される。そして、共同体を離脱する際にも、(おそらく再び会うことはないであろう)メンバーに嫌われないように配慮しなければならない。もちろん、近年はグローバル化や世代交代で、この風習が変化しつつあるのは間違いない。
もっとも、私の場合、「ジョブ型の落とし子」と言っていいほどの人生を送っている。氷河期世代である私は、20代後半に身に着けた企業法務というスキルを武器にして様々な企業を渡り歩いているからだ。これまでの自分の人生を振り返ると、地道にコツコツと育成してきた企業法務という唯一無二のスキルが、人生の要所要所において私自身を助けてくれたような気がする。