この春に岐阜県と愛知県の某町長が自身のパワハラ・セクハラで相次いで辞職に追い込まれた出来事は記憶に新しい。当時ニュースで大きく報道されたので、憶えている人もいるだろう。私も法務コンプライアンス業務に従事する立場上、弁護士で構成された第三者委員会の調査報告書は興味深く拝見した。
これらの調査報告書には、第三者委員会が発足した経緯・調査手法・認定された事実・認定されたハラスメントの事実・提言などが記載されている。特に岐南町の町長にいたっては、「町長の職を即時に辞して頂く以外の選択肢はない」という提言で締めくくられている。要するに「あなたは地方自治体のトップとしての資格はない=クビ」という結論。なかなかここまで強烈な調査報告書はお目にかかったことはない。ある意味、これらの調査報告書はハラスメント研修の生きた資料として非常に有益だと思う。コンプライアンス担当者は一読しておいて損はない。
そして、最近になって兵庫県の現職知事にパワハラ疑惑が浮上。副知事の辞任や元部下の自殺などが報道され、大きな問題になりつつある。現時点において下手な先入観は禁物だが、すでに死者が発生している時点で冒頭の二件に比べると相当異常な事態だろう。
しかし、なぜこうも立て続けに地方自治体トップにハラスメント疑惑が生じるのだろう。もっとも、民間企業でもそれは同様で、昨年には某大手中古車販売会社や某大手歌劇団などでも似たようなケースは散見されたが・・・・。
私が思うに、組織のトップには強力なリーダーシップだけではなく、謙虚さ・思いやり・包容力などのヒューマンスキルも求められると思う。それは、人としての器量やEQなど様々な言葉で表現できるが、総合的な人間力そのもの。いわば一人の人間としてのバックボーンとなるOS的なもので、どれだけ優れたアプリケーション（スキル）を保有していても、最後の最後にはOSが優先する。特に、社会的地位が高い人物であるほど人間力は重要なファクターとなる。
かくいう私自身も、プレイングマネジャー（上級管理職）という立場上、もちろん人間力（ヒューマンスキル）を常に意識している。つまり、「上に立つ者は優れた人格者でなければならない」というのが私の哲学。その一環として、私なりに様々な取り組みにチャレンジ中。
そのうちの一つが毎朝kindleで偉人の名言集に目を通すこと。やはり時代が変わっても人間の本質はそれほど大きく変化しておらず、過去の偉人が残した言葉には心打たれるものが多い。下手なビジネス書を読むより、こうした名言集を何度も繰り返して読む方がビジネスパーソンにとってよほど有意義だと思う。
あと、スマホのto doアプリに自分の行動指針（クレド）を登録しておき、毎朝目を通している。つまり自分の言葉で自分自身を洗脳するようなもので、もう10年近く継続している習慣。しかし、to doアプリをこのように使っている人間は日本広しといえどもおそらく私ぐらいだろう（笑）。
※毎朝to doアプリでこの文章を目を通す。
あと、数多くの人生経験を積み重ねて成功と失敗を経験することも人間力形成に役立つ。特に私は転職経験がかなり多い方だが（笑）、自分のノウハウだけを持って新しい会社に飛び込んで徒手空拳でゼロから結果を出す、という人生経験は想像以上に成長の糧となってくれる。それも人生の醍醐味。
・・・冒頭の元町長二人も人間力を向上するための何らかの努力を行って、もう少し謙虚に振る舞っていれば、その地位を追われる事はなかったかもしれない。私が思うに権力中枢に近い人物であればあるほど、
- 自分を客観視して、世間の考え方と乖離していないかを内省する。
- 自分の発言や行動が他人にどのような印象を与えているか想像する。
- 誰に対しても分け隔てなく公平かつ礼儀正しく接する。
といった行動や姿勢が求められる。さらに、「礼儀正しさは最強の武器である」という格言があるように、特に謙虚さや礼儀正しさは人間力そのものの根幹となるもの。
いずれにせよ、「最後はスキルより人間力（＝人としての器）が全てに優先する」というのが私の確信に近い考え。つまるところ、人生とはそれが続く限り「自分磨きのトライ＆エラー」という一面があり、ビジネスパーソンは自らの権限には責任が伴うことをはっきりと自覚して己をきちんとコントロールすることが大切。今回の事例は自分自身に対する反面教師としよう。
