企業法務担当者のビジネスキャリア術

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【企業法務】ハラスメント研修の有益な資料!?/某地方自治体の第三者委員会の調査報告書を一読してみた

今年度の社内向けコンプライアンス研修の準備をしていたところ、インターネットで以下のとおり興味深い資料を発見した。
 
 
 
 
少し前にニュースになっていたので、知っている人も多いだろう。今年に入って岐阜県岐南町と愛知県東郷町の町長による職員に対するパワハラ・セクハラ疑惑が浮上。マスコミの報道により一気に全国レベルの大ニュースとなり、注目を浴びていた。
 
 
 
それぞれ弁護士により構成された第三者調査委員会が発足し、ホームページで調査報告書が公表された。ある意味、これが「とどめ」となり、両町長はいずれも辞職を余儀なくされている。
 

私としても、法務コンプライアンス業務に従事する立場上、これらの調査報告書を興味深く一読した。「昭和ではなく、令和の時代にこのようなハラスメント行為が起きたのか?」と目を疑いたくなる内容。例えば、岐南町の調査報告書の末尾 資料3に列挙された元町長による不必要な身体接触・不快な言動の一覧を以下のとおり抜粋しよう。

 

1.令和2年の秋頃から、自席で作業中、「ご苦労様」と声を掛けられ頭をポンポンと触られた。

2.町長室で打ち合わせをしていたところ「大変やな」と言って頭をポンポンと触られた。

3.「色白だろう」といって、ズボンをめくりあげて見せつけてきた。

4.手のひらを見せて「すべすべだろう」と聞き、同意すると、「一回触ってみろ」といって触らされた。

5.令和3年頃、土日で出勤して働いていたところ、通りがかった町長から、お疲れさんみたいな感じで頭をポンポンと触られた。

6.手相をみたる、と言って手を触られた。

7.令和3年頃、がんばっとるかみたいな感じで頭をポンポンと触られた。

8.令和3年頃、すべすべだと自慢しながら「触ってみろ」と要求し、手を触らされた。

9.令和3年頃、「すべすべだろう」と脛を見せられた。

10.パンツルックをしていた日、履いていたズボンの話題となり、下着の意味のアクセントで「パンツ」と言わせようとさせられた。

11.個人的に昼食に誘われた。

12.週に2~3回くらいの頻度で頭をポンポンと触られた。

13.頻繁に後ろから肩に手を置かれ肩を揉まれた。

14.「すべすべやな」「赤ちゃんみたいな手してるね」などとしゃべりながら、手の甲を、30秒位にわたって、さすってきた。

15.「旦那と仲良くしとるか」などと配偶者との関係を聞かれた。

16.自分は望んでもいないのに、「子供を作ったほうがいい」などと、私的な事項について一方的な意見を述べられた。

17.令和2年11月から、会う度に、頭をポンポンと触られた。

18.令和3年5月頃、お尻を掌でポンと触られた。

19.令和3年5月頃、階段を降りるときに肩を抱かれた。

20.令和3年5月頃、階段を上がっている時にも手をつながれ、肩も抱いたかれた。体をよけると「おじいちゃんと子どもみたいだからいいよな」というようなことをいわれた。

21.太ももに手を置かれた。

 

これらの行為は、厚生労働省のHPで公開されているハラスメントの要件に完全に当てはまっている。どうみてもアウトな行為のオンパレードで、地方自治体のトップがこのような言動や行動をしていたとしたら、本当に驚かされる。なんでこのような人物が組織の長になれるのだろうか?第三者委員会が「町長の職を即時に辞して頂く以外の選択肢はない」と結論づけたのは無理もない。しかし、考えようによっては、この調査委員会の資料は社内向けコンプライアンス研修の有益な参考資料になりうるかもしれない。「私たちはこれらの事件を反面教師にしましょう」という結論に持っていけば、おそらくほぼ全員の受講者が納得するだろう。
 



しかし、過去から政治家や行政職の不祥事がたびたび話題になるが、今回のようにひとたび大きな失敗を犯すと地位や名誉も失ってしまう。今回の転落劇もつまることろ、自分自身の普段の行動が招いた結果。私もマネジャー(=組織の長)の一人として、反面教師にしたいと思う。