企業法務担当者のビジネスキャリア術

氷河期世代の企業法務担当者がライフログとして日々の出来事を記録しています。2009年に開始したブログは17年目を迎えました。

【VUCA戦略】「就職氷河期」なのに就活を知らない、私の小さなコンプレックス/小説『タイムスリップしたら~』を読んで。

「就職氷河期世代」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるだろうか?
 
山のような不採用通知、リクルートスーツで駆けずり回った夏、報われない努力……。これらを数多く体験した人は世の中にたくさんいるはず。かくいう私も氷河期世代にモロに該当する。
 
 
 
昨年、大阪市立中央図書館で借りて読んだのがこちらの小説。タイトルからして、どこか他人事とは思えない空気をまとっている一冊だ。

 

 
<あらすじ>
2019年、非正規雇用で働く桜井凛子(41歳)と鶴丸俊彦は、ある日雷に打たれ、21歳だった頃の1999年へとタイムスリップする。人生をもう一度やり直す二度目のチャンスを得た二人。しかし、一度目の記憶があるからといって、いわゆる「チート無双」ができるほど現実は甘くない。二度目であっても、氷河期の荒波は容赦なく彼らに襲いかかっていく・・・。
 

 

1.「氷河期世代」という記号の外側で

作中では、当時の就職活動の過酷さがこれでもかと描き出されている。セクハラ・パワハラ・モラハラなんでもあり。 氷河期世代の私もさぞかし身に摘まされる思いで読むだろう……。そう思われるかもしれないが、実は少し違う。
 
実は、私は就職氷河期世代でありながら、世に言う「セオリー通りの就職活動」を一度も経験したことがない。大学3年生の時、学内の掲示板で見つけた司法書士事務所のアルバイトとしてもぐりこみ、そのまま卒業と同時に正社員として採用(ちなみにこの事務所は、初代所長の引退と同時に司法書士法人化したが、昨年廃業している)。リクルートスーツに身を包み、就職博覧会の熱気に揉まれ、何十社もの面接に落とされる。そんな同世代の多くが経験した痛みを、私は実は全く知らない。

 

kigyouhoumu.hatenadiary.com

 

 
従って、私は「就職氷河期世代ではあるが、就職活動で苦労した経験がない」というかなり珍しいタイプ。それが私の中ではちょっとしたコンプレックスのようなもの。今にして思えば、きちんとした就職活動を行えばよかったかもしれない。もちろん、その場合は相当苦労していたことは間違いないし、企業法務の道に足を踏み入れることはなかったかもしれない。
 

2.遠回りで見つけた「天職」という光

けれど、そんな「正解のない後悔」を打ち消してくれるのもまた、今の自分自身。
 
当初志していた司法書士への道は、厳しい現実を知る中で諦めることになる。しかし、その挫折の先に待っていたのが、今の企業法務という天職との邂逅だった。司法書士事務所を退職後、キャリアを積み上げるために転職を繰り返した私。それは、迷いではなく、今にして思えば、「人生で戦うための武器」を手に入れるための必要なプロセスだった。
 
結果として、私は、企業法務を主軸にしながらも、審査(与信管理)・知財・ITといった隣接領域の経験値を相応に蓄積し、現在はオールラウンダーという立ち位置にある。めぐりめぐって現在、法務部門プレイングマネジャーとして仕事をするうえで、これらの経験が確実に血肉となっているのだから、人生とは本当にわからない。このあたりは、「大多数の人が通らない裏ルートを好む」反骨精神豊かな(?)自分らしい生き方であり、この少し風変わりでユニークな職業遍歴を私は案外気に入っている。
 

 

3.執着を手放し、「持てる武器」で生きていく

そういえば、本作の主人公・桜井凛子も、最初の人生では「編集者になりたい」という目標のために出版社狙いで就職活動に臨んだが、結果は全滅。その後、非正規として人事労務の現場で経験を積み重ね、二回目の人生ではその経験を武器に大手総合電機メーカーの子会社の人事労務部門へと転職し、着実にキャリアを築いていく。それは主人公の「編集者になりたい」という当初の目標とは全く異なった道。
 
 
「当初の目標に固執せず、あくまで自分が持っているリソース(スキル・経験)で人生を戦い抜く」
 
 
そのしなやかな軌道修正のあり方は、図らずも私の歩んできた道と重なり、思わず強い親近感を覚えずにはいられなかった。 今はVUCAの激しい時代。自分の人生はいつでも思い描いたとおりには進まない。しかし、遠回りや軌道修正の末に辿り着いた場所が、案外「最適解」であることもある。つまり、若き日の理想とは違っていても、目の前の現実とガムシャラに向き合い、積み上げたスキルで自分の人生を切り拓いていく。その勇猛果敢な姿に深い親近感と「こういう生き方も間違っていないのだ」と確かな肯定感をもらった気がする。
 
もしも今、あの頃の自分にタイムスリップして一つだけアドバイスができるとしたら、何を伝えるだろうか? 私は、『その遠回りは無駄じゃない。人生において無駄な経験は一つもない』と言ってあげたい。