1.年金財政の危機!?
先日、目にしたのが以下のニュース。
年金制度の改革に関する法令で、2022年10月に施行予定。この法律の目的は、これからの少子高齢化社会の到来を見越した年金制度の財務基盤の強化にある。その中で特に私が目を引いたのが次の箇所。
非適用業種(法定16業種以外の個人事業所は非適用)の見直し
非適用業種 ⇒ 弁護士・司法書士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業については、他の業種と比べても法人割合が著しく低いこと、社会保険の事務能力等の面からの支障はないと考えられることなどから、適用業種に追加する。
今まで、弁護士や司法書士などの士業の事務所には厚生年金や健康保険は適用されなかったが、2022年からは従業員5名以上の事務所は強制適用となる。これは、それだけ年金財政の悪化状況が待ったなしという事実の裏返しだろう。
2.過去に司法書士事務所勤務経験あり
このニュースを目にして少し感慨深い私。現在、上場企業の企業法務担当者として働いている私だが、20代の頃には大阪市内の司法書士事務所に4年ほど勤務していた経験がある。
零細規模の司法書士事務所・税理士事務所・行政書士事務所などは、人件費の費用増加を避けるために厚生年金や健康保険に加入していないのが大半。私が働いていた司法書士事務所も例外ではなかった。私も働くまでわからなかったが、士業の業界は、徒弟制度の名残が色濃く残っており、スタッフの福利厚生が充実しているケースは少ない。現在は、司法書士事務所法人など厚生年金や健康保険に加入している事務所も見かけるようになったが、当時は事務所法人は存在せず、結局は社会保険加入は事務所経営者の考え方次第だった。
従って、私は自分の給与から国民年金や健康保険などを支払っていたわけで、先輩同僚たちは、陰でよく不平不満をグチグチとこぼしていた。その結果として、事務所職員は老後は厚生年金ではなく国民年金という前提でのライフプランニングが必要になってくる(一方で、士業経営者は自分の老後を見越してきちんと蓄財している)。当初は、疑問に思わなかった私だが、一般企業に勤めている友人との待遇の違いに次第に違和感を持ち始め、将来性に疑問を抱いて別業界に転身する。それが現在の企業法務担当者としてのキャリアにつながっているわけで、結果としてその選択は正解だったわけだが・・・。
このように、士業の事務所には、待遇面で一般企業と違う思わぬ盲点があるので、業界志望者はこのあたりも注意しておいた方がいい。
3.まとめ
そういえば、私が司法書士事務所から一般企業に転職した際、役所に国民年金から厚生年金への切り替え手続きに行ったことがあった。その際、職員に「これまでフリーターでもなさっていたのですか?」と言われたのは忘れられない。
私としては、零細事務所の職員ながら、一応スーツとネクタイをしめて、それなりにプライドを持って仕事をしていたつもりだが、世間からの認識が「この程度」と知って非常に落胆したものだ。
今回の年金制度改正法を受けて、多くの士業の事務所は、厚生年金や健康保険に加入せざるを得ない状況となるだろう。大半の士業経営者にしてみれば、今回の措置は事務所の人件費アップに直結するため、できれば敬遠したいのが本音。しかし、仮にも法律を「メシの種」にしている士業ならば、今回の年金改正法もきちんと守って、将来における我が国の年金財政の破綻回避に貢献してほしいものだ。