以前に他の法務ブロガーの方々が紹介されていた書籍を続けて読破したので、その感想について簡単に触れてみたい。
本書は、企業法務の一般論(セオリー)化を試みたもので、以下のとおり3部構成となっている。
第1部 企業法務担当者の心構え
第2部 企業法務遂行スキル
第3部 典型的な法務案件のセオリー
本書では、企業法務の位置づけ・役割から具体的なテクニックまでかゆいところまで触れており、新人企業法務担当者の学習用テキストとしてはうってつけだ。また、中堅以上の担当者にとってもどちらかというと経験則によって一歩一歩学ぶことの多かった企業法務という仕事について、改めて自分の中で何らかの「体系化」を試みる際に役立つのではないだろうか。
個人的に参考になったのは、「第2部 企業法務遂行スキル」の具体的なテクニックの紹介だ。ここはなんども再読およびメモ書きして今後の自分の業務に生かしていきたいと考えている。 私が新人時代の頃はこのような良質の書籍はほとんど出回っておらず、企業法務担当者として成長するために何をしていくべきか四苦八苦した事がある。しかし、こうした書籍にもう少し早く出会っていれば、回り道せずにスムーズにスキルアップすることができたのではないだろうか。そう思わせてくれる良書だ。
本書は、「企業法務のセオリー」と同じく、現役企業法務担当者によって執筆されたものだ。構成内容も同書とそれなりに類似している。企業法務担当者が身につけるべきスキルや法務部門を立ち上げ方・参考書籍などがわかりやすくまとまっている。 ただ、非常に面白かったのが、著者が様々な企業において経験した法務業務の経験談がかなり具体的に描写されている点だ。一応会社名は「B社」「D社」等のように伏せ字にはされているが、末尾の著者経歴欄にバッチリと会社名が表示されているので、これと照らし合わせると、おおよそどの会社におけるエピソードなのか推測することができてしまう。
そして、個人的には本文よりこの経験談の方がよっぽど面白かった。「ここまで書いていいのかなあ?」と不安に思ったほどである。特に、各論編の「第1章 法務部門の立ち上げ」などは非常に生々しくで、他社の様子をうかがい知ることができたので、興味深く拝読した。また、138ページからから143ページにかけての転職に関する著者の考え方には、転職経験者である私もうなづくことも多かった。 というわけで、本書は、もちろん企業法務に関する紹介本という位置づけなのだが、企業法務担当者である著者のちょっとした自分史というようにも捉えることができる。同じ企業法務担当者ならば、共感することも多いと思う。
3.まとめ
私は、仕事帰りなどに大型書店に立ち寄ると、企業法務に関する新刊がないかマメにチェックはしているが、私が駆け出し担当者の頃に比べると、本当に充実しているという印象を受ける。それだけ、世間における企業法務やコンプライアンスに対する意識が重要視されているというあらわれだろう。昔に比べると、本当に隔世の感があるが、企業法務担当者としては、うれしい限りだ。